少女達の青春群像 ~舞、その愛~
歩はここのところ毎日紗智と一緒に帰っている。
いや、最初から一緒には帰っているのだが、今までは並んで帰ることが無かったのだ。
下校時は歩や紗智の他に亜希、真子、智恵美、華世といった面々と帰っているのだが、通学路の道幅が狭いこともあって大抵二列になって帰っている。その並びも決まっていて、先頭が亜希と智恵美、その次が歩と華世、最後が紗智と真子といった並びだ。みんな一緒に帰っているとはいっても、実際は華世と一緒に帰っているようなものだった。
歩が紗智と帰るようになったのは橋本のことを訊きだす使命を受けたから。その為に真子と交代したのだ。交代した真子はもちろんのこと、他のメンバーも紗智以外は全員がその理由を知っていた。
それぞれが別々に橋本のことを訊いても、かえって紗智は口を割らないだろう。だったら1人が集中して訊いた方がいい。みんながその意見だったので、こういった形になったのだ。
紗智に訊く役目は、実をいうとなかなか決まらなかった。本当は彼女と一番仲がいい真子がした方が自然なのだが、真子は自分には無理だと頑なに断ったのだ。
舞と響歌、それに沙奈絵は、紗智とは帰りが別だ。こずえと奈央も自転車通学だから除外された。こういったことは、やはり学校からの帰りが一番訊きやすいからだ。
彼女達を省いたら5人しかいなくなるのだが、亜希は同じクラスではあるものの、紗智とは2人きりで話したことがあまり無い。別のクラスである智恵美や華世はそれ以上に無かった。そうなると残る歩がやるしかない。
「ところで昨日、また橋本君と仲が良かったみたいだけど、どういった感じなの?」
あくまでもさり気なく橋本の話題を出す歩。
「どうって、別に普通だよ」
歩の意図を感じ取ってか、短く終わらす紗智。
「そうかなぁ、ムッチーやまっちゃんはそんな風には言っていなかったけど。さっちゃん、凄く楽しそうだったみたいだし」
「それは2人が大袈裟に言っているだけでしょ」
歩はもう少し突っ込んでみたが、やはりそっけなく返されてしまう。
「でも、さっちゃんは橋本君と話していて楽しいでしょ。まさか嫌なわけじゃないよね?」
「そりゃ、橋本君と話すのは楽しいけど…」
「他の男子と話している時とは全然違うっていう話だよ」
「………」
紗智が黙り込んでしまった。もしかして突っ込み過ぎたかもしれない。
それでもここまで突っ込んだら後には引けない。
「告白しないの?」
「………」
やっぱり突っ込み過ぎた?
えっ、でも、どうして黙っているの。違ったら、すぐに反論するでしょ。
歩は紗智からの返答が無かったので慌てたが、その時、紗智が呟くように言う。
「…今更しても、仕方がない」
えぇっ、今、さっちゃん、認めるようなことを言ったよ!
自分達のすぐ前を歩いていた真子と華世も驚いている。実はさっきから2人の会話を盗み聞きしていたのだ。
「え、あ、そうだよね、もうすぐ卒業だもんね」
歩は焦りながらも紗智に会話を合わせた。それ以降、橋本の話題は話さなかった。
いや、最初から一緒には帰っているのだが、今までは並んで帰ることが無かったのだ。
下校時は歩や紗智の他に亜希、真子、智恵美、華世といった面々と帰っているのだが、通学路の道幅が狭いこともあって大抵二列になって帰っている。その並びも決まっていて、先頭が亜希と智恵美、その次が歩と華世、最後が紗智と真子といった並びだ。みんな一緒に帰っているとはいっても、実際は華世と一緒に帰っているようなものだった。
歩が紗智と帰るようになったのは橋本のことを訊きだす使命を受けたから。その為に真子と交代したのだ。交代した真子はもちろんのこと、他のメンバーも紗智以外は全員がその理由を知っていた。
それぞれが別々に橋本のことを訊いても、かえって紗智は口を割らないだろう。だったら1人が集中して訊いた方がいい。みんながその意見だったので、こういった形になったのだ。
紗智に訊く役目は、実をいうとなかなか決まらなかった。本当は彼女と一番仲がいい真子がした方が自然なのだが、真子は自分には無理だと頑なに断ったのだ。
舞と響歌、それに沙奈絵は、紗智とは帰りが別だ。こずえと奈央も自転車通学だから除外された。こういったことは、やはり学校からの帰りが一番訊きやすいからだ。
彼女達を省いたら5人しかいなくなるのだが、亜希は同じクラスではあるものの、紗智とは2人きりで話したことがあまり無い。別のクラスである智恵美や華世はそれ以上に無かった。そうなると残る歩がやるしかない。
「ところで昨日、また橋本君と仲が良かったみたいだけど、どういった感じなの?」
あくまでもさり気なく橋本の話題を出す歩。
「どうって、別に普通だよ」
歩の意図を感じ取ってか、短く終わらす紗智。
「そうかなぁ、ムッチーやまっちゃんはそんな風には言っていなかったけど。さっちゃん、凄く楽しそうだったみたいだし」
「それは2人が大袈裟に言っているだけでしょ」
歩はもう少し突っ込んでみたが、やはりそっけなく返されてしまう。
「でも、さっちゃんは橋本君と話していて楽しいでしょ。まさか嫌なわけじゃないよね?」
「そりゃ、橋本君と話すのは楽しいけど…」
「他の男子と話している時とは全然違うっていう話だよ」
「………」
紗智が黙り込んでしまった。もしかして突っ込み過ぎたかもしれない。
それでもここまで突っ込んだら後には引けない。
「告白しないの?」
「………」
やっぱり突っ込み過ぎた?
えっ、でも、どうして黙っているの。違ったら、すぐに反論するでしょ。
歩は紗智からの返答が無かったので慌てたが、その時、紗智が呟くように言う。
「…今更しても、仕方がない」
えぇっ、今、さっちゃん、認めるようなことを言ったよ!
自分達のすぐ前を歩いていた真子と華世も驚いている。実はさっきから2人の会話を盗み聞きしていたのだ。
「え、あ、そうだよね、もうすぐ卒業だもんね」
歩は焦りながらも紗智に会話を合わせた。それ以降、橋本の話題は話さなかった。