少女達の青春群像           ~舞、その愛~
「次は歩ちゃんだよ!」

 舞は目を輝かせながら隣に座っている歩を見た。期待しているのがそれだけでもわかる。

 なんたって、こんなに可愛らしい歩ちゃんなんだもの。絶対に私達を驚かせてくれるはずよ。

「そんなに期待をされても、響ちゃんのような話は言えないよ。私も今まで片想いばかりだったから」

「えっー、歩ちゃんが片想いばかりだったなんて。まったく、世の中の男共はいったい何をしていたんだろうねぇ!」

「えっー、ムッチー、それどういうこと。告白もできなかったんだもの、恋が実るわけがないよ!」

 歩自身は驚いているが、響歌も舞と同意見だった。

「なんか意外だね。歩ちゃんなら、告白しなくても先に相手から告白されそうなのに」

 紗智と真子も、響歌の言葉に頷いた。

「そんなことないよ。やっぱり私は響ちゃんみたいに目立たないし、男の子と話をするのも苦手だもの。実る以前の問題だよ。以前好きだった人とも全然話せなかったし、今も…あの…そうだから」

「じゃあ、歩ちゃんの好きな人って誰なのよ?」

 最初に訊かなければならなかった質問を、ここでようやく紗智がする。

「…やっぱり言わなきゃ、ダメ?」

『当然!』

 はやりハモる4人の声。

 歩は溜息を吐くと白状した。

「この学校の人で、1つ年上の普通科の人だよ。細見一樹(ほそみかずき)さんっていうの」

 年上って!

 …いや、でも、歩ちゃんらしいかも。

 なんたってこんなに愛らしいんだもの。やっぱり年上の包容力で包み込んであげなくっちゃ、すぐに壊れてしまうわ。

 いやぁ、それにしたって歩ちゃんもなかなかやるわね。年上を捕まえようとしているんだもの。凄いわ!

 舞は歩をまた尊敬した。

「ここで年上が出てきたかぁ。でも、歩ちゃんらしいよね。以前から、歩ちゃんには同級生の男子とかは合わない気がしていたもの。1学年上なら2年間は一緒の学校生活が送れるし、結構ポイント高いかも」

 真子が声を弾ませると、響歌もノリノリでそれに続く。

「今度、その人を見かけたら絶対に教えてよ。歩ちゃんも内に秘めるところがあるからね。それに自分のことよりも他人のことに力を注ぎそうなんだもの。でもね、知った以上は私らも協力したいのよ。年上だとちょっと難しいかもしれないけどさ。私も自分のことだけじゃなくて、みんなの恋も応援するから。もちろん協力だってするよ」

 響歌のことだ、歩が頼まなくても何かはしてくれるだろう。

「でも、響ちゃん。響ちゃんが一番大変なんだから、響ちゃんもムッチーのように自分のことを優先してね。まっちゃんもだよ。私とは違って同じ学年で同じクラスなんだから。まずは友達になることを目指して頑張ろうよ。もちろん他のみんなもだよ。私のことは後まわしにしてくれていいからね!」

 …わかっていますって。

『まずは自分のこと、でしょ』

 最後までハモる4人だった。
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