少女達の青春群像 ~舞、その愛~
走っていた電車も、響歌の心の中を表すかのようにタイミングよく停車した。
あっちゃー、やっぱりもう噂が伝わっている。
石像化になっていた舞も、これにはハラハラしながら響歌を見るしかない。
「つき合っているわけがないでしょ!」
響歌は慌てて否定したが、黒崎はわかっているのかいないのか、よくわからない表情をしながら別れの挨拶をして電車を降りていった。
車窓から、駅の階段を降りていく黒崎の姿が見える。
開いていた扉が閉じて、電車が再び走り出した。
響歌は小さくなっていく黒崎の姿を見ながら溜息を吐いた。
「お前と中葉って、至る所で噂になっているよな」
橋本が響歌の気も知らず、感心したように言った。
響歌はそんな橋本に『あんたとも噂になっているけどね!』と言ってやりたかったが、理性でその感情を抑えた。
舞は相変わらず黙ったままである。
「感心していないで、少しは助けてあげようっていう、優しい気持ちにはなれないの?」
「だってオレ、関係ないもん」
「それなら放課後、中葉君と一緒に私達の席に来る頻度を減らしてよ。こう毎日毎日じゃ、周りから怪しく思われて当然でしょ。私達に構う暇があれば、他の男子達と交流を深めたらいいのに」
「そんなの、オレの知ったことじゃないだろ。だいたい中葉の奴が、放課後になると席を立ってお前達の方に行くんだ。それでも中葉だけだと色々噂になるだろうから、オレも仕方なく中葉についていっているんだよ。感謝こそされ、不満を言われる覚えは無い」
いえいえ、そのお陰で余計に噂になっているから。
舞はそう思ったが、悲しいことにやはり口には出せなかった。
もちろん舞の隣にいる響歌はそうではない。
「楽しそうだけど、本当にコッチは困っているんだからね。中葉君もいったい何が楽しくて私らの方に来るのよ。他の男子達と話している方がよっぽど楽しいはずでしょ」
「そりゃ、お前のことが気に入っているからだろ。見ていてわからないのか?」
「わかるけど…わかりたくない」
「なんだ、そりゃ」
「だって…」
響歌と橋本は舞を置いて2人で話していた。
…私、もしかして忘れられていない?
完全に『2人の世界』を作り出しているんですけど!
舞は凄く居心地が悪かった。
2人とは一歩だけ後ろに下がっているが、これ以上離れると後で響歌に怒られるに決まっているのでここにいるしかない。
それにしても…橋本君に転ぶ可能性かぁ。
確かにこれはあるかもしれない。
決定的な何かは無いけど、2人にはそんな予感を感じさせる雰囲気があるの。
響ちゃんと橋本君の路線はあまり考えたことが無かったけど、こうして見ているとなかなか似合ってもいるわ。
ま、私とテツヤ君程ではないけどね!
似合っているといえば、響ちゃんはさっきの黒崎君とも似合っていそうだったけど…う~ん、どっちがより似合っているんだろ?
確実に言えるのは、中葉君とは似合っていないっていうことだわ。
中葉君、頑張っているのにねぇ。
もしかして頑張り過ぎているからダメなのかしら。
だって響ちゃんには既に好きな人がいるのよ。そんな人にあれだけ接近戦を繰り広げていたら却って逆効果になるんじゃないの?
いや、これは断言もできてしまうわ。やっぱり好きでもない人にあれだけつきまとわれていたら、誰だって鬱陶しくなるわよ。
その点でいうと橋本君の場合は、響ちゃんが何故か嫌がっている『響歌ちゃん』呼びをして響ちゃんをからかったりしているけど、中葉君みたいに接近戦ではなくて一歩引いて響ちゃんに接しているの。
放課後、響ちゃんのところに来るところは一緒の癖に!
橋本君って、とぼけた顔をしているのになかなかやるわね。
あっちゃー、やっぱりもう噂が伝わっている。
石像化になっていた舞も、これにはハラハラしながら響歌を見るしかない。
「つき合っているわけがないでしょ!」
響歌は慌てて否定したが、黒崎はわかっているのかいないのか、よくわからない表情をしながら別れの挨拶をして電車を降りていった。
車窓から、駅の階段を降りていく黒崎の姿が見える。
開いていた扉が閉じて、電車が再び走り出した。
響歌は小さくなっていく黒崎の姿を見ながら溜息を吐いた。
「お前と中葉って、至る所で噂になっているよな」
橋本が響歌の気も知らず、感心したように言った。
響歌はそんな橋本に『あんたとも噂になっているけどね!』と言ってやりたかったが、理性でその感情を抑えた。
舞は相変わらず黙ったままである。
「感心していないで、少しは助けてあげようっていう、優しい気持ちにはなれないの?」
「だってオレ、関係ないもん」
「それなら放課後、中葉君と一緒に私達の席に来る頻度を減らしてよ。こう毎日毎日じゃ、周りから怪しく思われて当然でしょ。私達に構う暇があれば、他の男子達と交流を深めたらいいのに」
「そんなの、オレの知ったことじゃないだろ。だいたい中葉の奴が、放課後になると席を立ってお前達の方に行くんだ。それでも中葉だけだと色々噂になるだろうから、オレも仕方なく中葉についていっているんだよ。感謝こそされ、不満を言われる覚えは無い」
いえいえ、そのお陰で余計に噂になっているから。
舞はそう思ったが、悲しいことにやはり口には出せなかった。
もちろん舞の隣にいる響歌はそうではない。
「楽しそうだけど、本当にコッチは困っているんだからね。中葉君もいったい何が楽しくて私らの方に来るのよ。他の男子達と話している方がよっぽど楽しいはずでしょ」
「そりゃ、お前のことが気に入っているからだろ。見ていてわからないのか?」
「わかるけど…わかりたくない」
「なんだ、そりゃ」
「だって…」
響歌と橋本は舞を置いて2人で話していた。
…私、もしかして忘れられていない?
完全に『2人の世界』を作り出しているんですけど!
舞は凄く居心地が悪かった。
2人とは一歩だけ後ろに下がっているが、これ以上離れると後で響歌に怒られるに決まっているのでここにいるしかない。
それにしても…橋本君に転ぶ可能性かぁ。
確かにこれはあるかもしれない。
決定的な何かは無いけど、2人にはそんな予感を感じさせる雰囲気があるの。
響ちゃんと橋本君の路線はあまり考えたことが無かったけど、こうして見ているとなかなか似合ってもいるわ。
ま、私とテツヤ君程ではないけどね!
似合っているといえば、響ちゃんはさっきの黒崎君とも似合っていそうだったけど…う~ん、どっちがより似合っているんだろ?
確実に言えるのは、中葉君とは似合っていないっていうことだわ。
中葉君、頑張っているのにねぇ。
もしかして頑張り過ぎているからダメなのかしら。
だって響ちゃんには既に好きな人がいるのよ。そんな人にあれだけ接近戦を繰り広げていたら却って逆効果になるんじゃないの?
いや、これは断言もできてしまうわ。やっぱり好きでもない人にあれだけつきまとわれていたら、誰だって鬱陶しくなるわよ。
その点でいうと橋本君の場合は、響ちゃんが何故か嫌がっている『響歌ちゃん』呼びをして響ちゃんをからかったりしているけど、中葉君みたいに接近戦ではなくて一歩引いて響ちゃんに接しているの。
放課後、響ちゃんのところに来るところは一緒の癖に!
橋本君って、とぼけた顔をしているのになかなかやるわね。