少女達の青春群像           ~舞、その愛~
「そういえば、今日は響ちゃんの好きな人を聞きそびれてしまったなぁ」

 …へ?

「中葉君、響ちゃんの好きな人が気になるの?」

「そりゃあね、だってムッチーのも橋本も…まぁ、あいつのはまだ1人に絞れていないけどな。それにオレだって言ったのに、響ちゃんのだけは知らないんだから。やっぱり気になるよ」

 これって…もしかしなくてもチャンスなんじゃないの?

 うん、今は響ちゃんもいないし、絶対にチャンスだよね。

 思い切って訊いてみようかしら?

 いや、訊いてみたいかも…

 うん、訊いてみるに限るわ!

「中葉君って、もしかして今は響ちゃんのことが好きなの。そういえば響ちゃんとつき合っているって噂になっているけど、中葉君は否定していないよね?」

「あぁ、好きだよ」

 中葉にとっては答え辛い質問のはずなのに、彼は即答した。

 あまりにもあっさり認めたので、舞は拍子抜けしてしまった。

「あ、やっぱりそうなんだ。うん、私もそうだと思っていたんだよね。で、中葉君は響ちゃんに告白する予定はあるの?」

「う~ん…そうだなぁ。あぁ、なんだったらムッチーの方から響ちゃんに言っておいてくれたらいいし」

「………」

 嫌な役目を任されてしまったような気がする。

「そうだ、明日はスマホを持ってこようかな。オレは学校には持ってこない主義だけど、知ったからにはみんなの好きな人の画像を撮ってあげたいしな。ムッチーも川崎の画像が欲しいでしょ?」

 もちろん欲しいですとも!

 あっ、ついでにまっちゃんの為に高尾君の画像も欲しいかも。

 やっぱりまっちゃんも、高尾君の画像は喉から手が出るほど欲しいと思うのよね。

 うん、友達思いの私としては、ここはやっぱり協力してあげないと!

 この時の舞は、この間の響歌の言葉を忘れ切っていた。

「あのね、中葉君。実は私達のグループの中に、2年の経済科の男子に恋焦がれている人がいるの。その子の為に、ちょっと協力してくれないかな。あっ、さすがに名前までは言えないんだけどね。スマホで画像を撮る予定ならそのついででいいし、その子のことも覚えておいてあげて。もし大変ならテツヤ君の画像はいらないから。うん、そうね。私はどうせハッピーエンドになる予定だしね。その時まで我慢するから、友達を先にお願いしたいな」

「あぁ、いいよ。じゃあ、明日、適当に撮ってみる。でも、その後でいいから、誰が誰に恋をしているか教えて欲しいな」

 やっぱり…こうなると教えた方がいいのかな。
 でも、中葉君にだったらいいか。

「うん、わかった。じゃあ、よろしく頼むね」

「あ、ムッチーの方も、響ちゃんのこと、よろしく」

 中葉の言葉に、舞の動きが止まる。

 もしかして…さっきのアレのことを言っているの?

 やはり気が進まない任務を任されたようだった。

「あ、う、うん」

 中葉に真子のことを頼んだ以上、承諾するしかなかった。
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