少女達の青春群像           ~舞、その愛~
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、いったい…ハァッ、どうしたの…ハァッ、中葉君」

 中葉に追いつくと、息を整える間も無く中葉に訊いた。

 中葉は舞の質問に答えず、逆に質問してきた。

「昨日、ムッチーが言っていた人って、糸井さんのこと?」

「えっ、なんの…」

「なんでわかったの!」

 響歌の言葉を、舞の大声が遮った。

 中葉が溜息を吐く。

「相手は、高尾」

「ムッチー、どういうこと!」

 今度は響歌が大声を出した。

「き、響ちゃん。落ち着いて…」

 舞が恐る恐るなだめるが、響歌の怒りは治まらない。

「どういうことか説明してくれる?」

 舞は昨日のことを正直に話すしかなかった。

「まったくもう、余計なことをしてくれたものよ。この間、私が言った言葉を覚えていなかったの?」

 はい、まったく、欠片さえありませんでした。

「そりゃ、好きな人の画像はまっちゃんだって欲しいだろうけどね」

 でしょう?

「それで成功していたら万々歳だっただろうけどね」

 でしょう!

「ミスッたんでしょ」

「えぇっー!」

 舞の絶叫が廊下に響き渡った。

 中葉は響歌の言葉に申し訳なさそうに、だが、あっさりと頷いた。

「しかも状況は悪い。そうなんでしょ?」

 またもや中葉はあっさりと頷いた。

 舞は脱力して座り込んだ。

 響歌が中葉を問い詰める。

「で、何人知っているの?」

「オレを除いて9人かな」

 早い話が、経済科の男子全員である。その中には当然高尾も含まれているだろう。

「最悪」

 舞に続き、響歌も座り込んだ。

 最悪どころか超最悪な状況である。

 しかし何故、こんなに早く真子の恋がバレたのだろう。この話は昨夜したばかりなのに。

「取り敢えず何があってそうなったのか、詳しく教えて欲しいんだけど」

 舞が促すと、中葉は話し始めた。

 中葉は昨日の言葉通りスマホを持ってきて、朝から男子達を撮りまくっていたらしい。体育前の更衣室でもそれは同じだった。

 男子達は『オレ、撮ってくれ。オレ』と言いながら画像に収まっていたが、そのうち黒崎が何か怪しいと気づいたようだ。
 で、最近、中葉は舞達と一緒にいる時が多いから、その辺りのことだろうと追及が始まった。

 そこで最後まで黙っていれば舞も中葉のことを尊敬したのだが、中葉はなんとあっさりと『舞達のグループの中に経済科の男子を好きな子がいて、その子の為に撮っている』とバラしてしまったのだ。

 そこから男子達の推理が始まった。
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