少女達の青春群像           ~舞、その愛~
「それにしても、よく私達5人の中からまっちゃんを探し出せたわね。あの子って、そんなにわかり易かったっけ?」

 響歌は不思議そうだったし、それには舞も同感だった。

 私達はまっちゃんの好きな人がまったくわからなかったのに。いったい何が原因でバレたのだろう。

「取り敢えず始めは消去法だったかな。まず響ちゃんとムッチーは外された」

 何故!

「自分の好きな人がバレるかもしれないことはさすがにしないだろうって」

 なる程、そうきたか。

「で、残ったのは河合さんと小長谷さん、糸井さんだったわけだけど、そこで高尾がボソッと言ったんだ」

「もしかして高尾君って、既にまっちゃんの気持ちを知っていたの?」

 響歌が信じられないといった感じで訊いた。

「あ、いや、そうじゃなくて。どうやら高尾は糸井さんに年賀状をもらったみたいなんだ。でも、あいつ以外の男子はもらってないみたいだし、オレもクラス全員に出したけど、糸井さんからは返事がきていなかったからさ」

「まっちゃんってば、私達が知らない間にそんなことをしていたの!」

「地味ながらも大胆な戦法だね、響ちゃん」

 舞と響歌は真子の予想外の行動に驚愕した。

 何しろ真子が、一言も話したことが無い男子に年賀状を出したというのだ。そんな度胸など舞にはもちろん無いし、響歌さえ無かった。

 クラス全員に出していたのならともかく、まったく話したことが無い男子に年賀状を出すなんて、告白していますと言っているようなものではないか!

 そりゃ、バレてしまうよ。

 本当にまっちゃんって、そんな大胆なことをしたの?

 あっ、でも、そういえばこの前、未だに年賀状を出している中葉君のことを、まっちゃんは庇っていたような…

 それって、自分も高野君に年賀状を出していたからだったんだ!

「で、わかった時の様子はどうだったの?」

 舞は嫌な予感がしたが、これは訊かなくてはいけないことだろう。

 中葉が言いにくそうな顔をする。

「高尾が『冬がきた』と言ってうなだれ、川崎が笑い出した…かなぁ」

 舞と響歌は揃ってうなだれた。

 最悪なのも程がある。彼女達の心は雪で埋もれてしまったかのようだ。

 中葉はその後も男子達が言っていたことを忠実に教えてくれたが、舞は半分以上聞いていなかった。自分で呼び込んでしまったとはいえ、厄介な問題が舞い降りてしまったことにガックリとうなだれるしかなかった。
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