少女達の青春群像 ~舞、その愛~
めまぐるしく変化する日々
舞が目の前にいる響歌に恐る恐る声をかける。
「響ちゃ~ん…生きてる?」
「…死んでる」
返ってきた声も、言葉通り死んでいた。
中葉が心配そうに響歌を見ている。
そんな中、響歌は立ち上がり、帰る準備を始めた。
「あっ、もしかして帰るの。じゃあ、私も…」
「いい」
響歌は舞が言いかけた言葉を短い言葉で遮ると、死んだ足取りで教室から出て行った。
「あはは、今日も取り残されちゃったね、私達」
まぁ、無理もないけど。
あの雪の日の翌日、黒崎は加藤に交際を申し込み、加藤からOKの返事をもらったようだ。
黒崎はそのことを響歌に傘を返した時に報告してくれた。
その場には舞もいたが、あんなに落ち込んだ響歌の姿はこれまで見たことが無かった。
黒崎君の報告を聞いて笑顔で祝福していたけど、彼が去った後の響ちゃんの顔ってば、もう!
ウッ…ウッ…ウッ…
思い出すだけで泣けてきてしまう。やっぱり私って、友達思いね。
「どうしたの、ムッチー。目にゴミが入ったの?」
中葉君ってば、何を言っているのよ。これは泣いているっていうのよ!
でも…とぼけたあなたも、ス・テ・キ 。
それでも今は響歌の為にこのまま誤解させておく方がいいだろう。
「実はそうなの。あっ、でも、大丈夫。もう取れたから」
「そうなんだ」
ふうっ、上手く誤魔化せたわ。私の演技力も捨てたものじゃないわね。
中葉は鈍いだけだったが、やはり舞は自分の都合よく解釈することにかけては天下一品だった。
「そういえばさぁ、最近、黒崎に彼女ができたらしいよ」
そんなの既に知っているわよ。そのせいで響ちゃんが落ち込んじゃって大変なんだから!
でも、もちろんこのことだって中葉君には言えないわ。
「えっ、えぇー、そうなんだぁ。いったい誰とつき合っているの。私達の知っている人なのぉ?」
ふうっ、上手く誤魔化せたわね。
中葉は舞の嘘くさい演技に圧倒されていた。
「あ、あぁ。相手は加藤さんだよ。いつだったかの放課後に、黒崎が『加藤、オレとつき合って』と言ったらしいんだ。で、つき合い始めたみたいなんだけど…でも、変なんだよなぁ」
「変って…中葉君は何か引っかかっているの?」
「まぁ、引っかかってはいるかな。だって加藤さんは高尾が好きなはずなんだ。それなのに黒崎とつき合うなんて。オレが見る限り加藤さんは本当は高尾が好きだけど、黒崎の告白を断れなくて受けたっぽいんだよなぁ」
な、な、な…
「なんですってー!中葉君、それ本当のことなの?」
じゃあ、加藤さんって、橋本君に想われ、響ちゃんの好きな黒崎君を射止めながら、まっちゃんの好きな高尾君を狙おうとしているの?
それじゃあ、あの人、かなりの悪女じゃない!
中葉君を振り、テツヤ君に想われながら、黒崎君を狙っている響ちゃんと張り合うわよ。
舞は響歌を可哀想だと思いながら、無意識のうちに彼女を悪女に仕立てあげていた。
そんなことを舞が思っているとは露知らない中葉は、淡々と話を続けた。
「あぁ、それは本当だと思うよ。前に加藤さんの口から高尾のことが好きだって聞いたことがあるもの」
「そうなの、そういうことなの」
「ところでムッチー。響ちゃんの好きな人って、もしかして黒崎なの?」
「うん、良く知って…………しまったぁ!」
舞は加藤のことに気を取られて、響歌の好きな人を誤魔化すことをすっかり忘れていた。
慌てて自分の口を覆ったが、もう遅い。
中葉に響歌の気持ちがバレてしまった!
「やっぱりそうなのかぁ。ここ数日の響ちゃんの様子と、今のムッチーの言動でもしかしたら…と思っていたけど、やっぱりそうなんだ。ちょっと意外だったなぁ。でも、それだと今の状況は、響ちゃんにとっては酷だよなぁ」
中葉はのんびりとした口調で自分の感想を言った。
響歌の好きな人が判明してショックを受けそうなものなのに、そのようにはまったく見えなかった。
響ちゃんのことはもう吹っ切れたのかしら?
「あの、中葉君。響ちゃんの好きな人のことは誰にも言わないでね。それと中葉君の方は、このことを知ってショックじゃないの?」
中葉は目を丸くして舞を見たが、すぐに納得したような顔になる。
「あぁ、そうか。ムッチーはオレを心配してくれているんだね。大丈夫だよ、響ちゃんのことなら今はもういい友達だと思っているから」
良かったぁ、もう響ちゃんのことは吹っ切れているのね。
「響ちゃんも行ってしまったし、オレ達も帰ろうか。あっ、そうだ。今夜、ムッチーにメッセージを送るから。すぐじゃなくてもいいけど、今日中に返事が欲しいな」
「もちろん返事をするよ。でも、いつもこうして会っているのに、なんでわざわざするの?」
「なんだか急にムッチーとやり取りがしたくなったんだ。じゃあ、そういうことで」
舞は少し妙に感じたが、中葉とメッセージのやり取りができるなんて思ってもみなかったので、上機嫌になってこれ以上深くは追及しなかった。
そうして上機嫌のまま中葉と別れたのだった。
「響ちゃ~ん…生きてる?」
「…死んでる」
返ってきた声も、言葉通り死んでいた。
中葉が心配そうに響歌を見ている。
そんな中、響歌は立ち上がり、帰る準備を始めた。
「あっ、もしかして帰るの。じゃあ、私も…」
「いい」
響歌は舞が言いかけた言葉を短い言葉で遮ると、死んだ足取りで教室から出て行った。
「あはは、今日も取り残されちゃったね、私達」
まぁ、無理もないけど。
あの雪の日の翌日、黒崎は加藤に交際を申し込み、加藤からOKの返事をもらったようだ。
黒崎はそのことを響歌に傘を返した時に報告してくれた。
その場には舞もいたが、あんなに落ち込んだ響歌の姿はこれまで見たことが無かった。
黒崎君の報告を聞いて笑顔で祝福していたけど、彼が去った後の響ちゃんの顔ってば、もう!
ウッ…ウッ…ウッ…
思い出すだけで泣けてきてしまう。やっぱり私って、友達思いね。
「どうしたの、ムッチー。目にゴミが入ったの?」
中葉君ってば、何を言っているのよ。これは泣いているっていうのよ!
でも…とぼけたあなたも、ス・テ・キ 。
それでも今は響歌の為にこのまま誤解させておく方がいいだろう。
「実はそうなの。あっ、でも、大丈夫。もう取れたから」
「そうなんだ」
ふうっ、上手く誤魔化せたわ。私の演技力も捨てたものじゃないわね。
中葉は鈍いだけだったが、やはり舞は自分の都合よく解釈することにかけては天下一品だった。
「そういえばさぁ、最近、黒崎に彼女ができたらしいよ」
そんなの既に知っているわよ。そのせいで響ちゃんが落ち込んじゃって大変なんだから!
でも、もちろんこのことだって中葉君には言えないわ。
「えっ、えぇー、そうなんだぁ。いったい誰とつき合っているの。私達の知っている人なのぉ?」
ふうっ、上手く誤魔化せたわね。
中葉は舞の嘘くさい演技に圧倒されていた。
「あ、あぁ。相手は加藤さんだよ。いつだったかの放課後に、黒崎が『加藤、オレとつき合って』と言ったらしいんだ。で、つき合い始めたみたいなんだけど…でも、変なんだよなぁ」
「変って…中葉君は何か引っかかっているの?」
「まぁ、引っかかってはいるかな。だって加藤さんは高尾が好きなはずなんだ。それなのに黒崎とつき合うなんて。オレが見る限り加藤さんは本当は高尾が好きだけど、黒崎の告白を断れなくて受けたっぽいんだよなぁ」
な、な、な…
「なんですってー!中葉君、それ本当のことなの?」
じゃあ、加藤さんって、橋本君に想われ、響ちゃんの好きな黒崎君を射止めながら、まっちゃんの好きな高尾君を狙おうとしているの?
それじゃあ、あの人、かなりの悪女じゃない!
中葉君を振り、テツヤ君に想われながら、黒崎君を狙っている響ちゃんと張り合うわよ。
舞は響歌を可哀想だと思いながら、無意識のうちに彼女を悪女に仕立てあげていた。
そんなことを舞が思っているとは露知らない中葉は、淡々と話を続けた。
「あぁ、それは本当だと思うよ。前に加藤さんの口から高尾のことが好きだって聞いたことがあるもの」
「そうなの、そういうことなの」
「ところでムッチー。響ちゃんの好きな人って、もしかして黒崎なの?」
「うん、良く知って…………しまったぁ!」
舞は加藤のことに気を取られて、響歌の好きな人を誤魔化すことをすっかり忘れていた。
慌てて自分の口を覆ったが、もう遅い。
中葉に響歌の気持ちがバレてしまった!
「やっぱりそうなのかぁ。ここ数日の響ちゃんの様子と、今のムッチーの言動でもしかしたら…と思っていたけど、やっぱりそうなんだ。ちょっと意外だったなぁ。でも、それだと今の状況は、響ちゃんにとっては酷だよなぁ」
中葉はのんびりとした口調で自分の感想を言った。
響歌の好きな人が判明してショックを受けそうなものなのに、そのようにはまったく見えなかった。
響ちゃんのことはもう吹っ切れたのかしら?
「あの、中葉君。響ちゃんの好きな人のことは誰にも言わないでね。それと中葉君の方は、このことを知ってショックじゃないの?」
中葉は目を丸くして舞を見たが、すぐに納得したような顔になる。
「あぁ、そうか。ムッチーはオレを心配してくれているんだね。大丈夫だよ、響ちゃんのことなら今はもういい友達だと思っているから」
良かったぁ、もう響ちゃんのことは吹っ切れているのね。
「響ちゃんも行ってしまったし、オレ達も帰ろうか。あっ、そうだ。今夜、ムッチーにメッセージを送るから。すぐじゃなくてもいいけど、今日中に返事が欲しいな」
「もちろん返事をするよ。でも、いつもこうして会っているのに、なんでわざわざするの?」
「なんだか急にムッチーとやり取りがしたくなったんだ。じゃあ、そういうことで」
舞は少し妙に感じたが、中葉とメッセージのやり取りができるなんて思ってもみなかったので、上機嫌になってこれ以上深くは追及しなかった。
そうして上機嫌のまま中葉と別れたのだった。