少女達の青春群像           ~舞、その愛~

初デートで、初体験

「ムッチー、おはよう。待ったかい?」

「おはよう、中葉君。私も今来たところよ」

 舞は少し俯きながら答えた。

「どうしたの、ムッチー?」

 モジモジしていた舞の顔を、中葉が覗き込んだ。

「いえ、なんでもないわ。ただ私服姿の中葉君も素敵だなと思って」

「なんだ、そんなことか。オレは時間が早過ぎたせいでまだ眠いのかと思ったよ。そうかぁ、そんなことを言ってくれるなんてな。一生懸命服を選んだかいがあったなぁ」

「確か、この日の為に4時間悩んで服を購入してくれたのよね。舞、嬉しい 」

 たとえ全身白ずくめで羊みたいでも、一生懸命選んでくれたんだもの。変だなんて口が裂けても言えないわ。

 それに羊みたいでも、やっぱり中葉君は素敵だもの。嘘は言っていないはずよ。

「そんなの、当たり前な話だよ。なんたって今日はオレと舞の記念すべき初デートの日なんだから。4時間なんて短いくらいだったよ」

「中葉君…」

「それにオレから見れば、ムッチーの私服姿の方が何倍も素敵だよ」

「っ!」

 中葉の言葉に、舞は顔が真っ赤になった。

 舞の肩を、中葉が抱いて促した。

「じゃあ、行こうか。少し寒いかもしれないけど、その分景色が澄んで見えるし、きっと素敵な1日になるはずだよ」

 そうよね、中葉君。今日は記念すべき初デートだもの。とても素晴らしい1日になるに違いないわ。

 時間もたっぷりあるし、知り合いにも出会わないだろうし!

 人目を気にすることなく、いつまでもイチャイチャできるわ。

 少し寒いけど、これくらいなら愛の力で乗り越えられるわよ。

 もし我慢できなくなったら、中葉君に…

「…フフフフフ」

 思わず口から笑いが零れる。

 やはりムッツリスケベな舞だった。

 現在の時刻は午前6時。場所は柏原駅前だ。柏原駅前はいつも人が多いが、今はほとんど人がいなかった。2人はこれから柏原市で一番広い七地蔵公園に向かうのだ。

 七地蔵公園は駅前からだとかなり離れた場所にある。だから当然のように車やバスを使って行く人が多いのだが、2人は徒歩で行くつもりだ。これは健康の為といった理由で中葉が決めたことなのだが、実はただ単にバス代をケチッているだけだった。

 それでも舞は、その本心には気づかず、中葉の言葉に感激して徒歩で行くことに承諾。徒歩だとかなり時間がかかるということで、始発で柏原駅に来たのだ。

 端から見ると舞は中葉にいいように操られていたが、幸か不幸か舞はそれに気づいていなかった。
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