少女達の青春群像 ~舞、その愛~
今日は学年最初の日に相応しい、いい天気だった。太陽に草木が緑色の草木が照らされ、その草木がキラキラ光っていて凄く綺麗だ。その中にピンク色に染まった桜が点々としている。そんな景色を見ていると、春になったんだなぁと実感させられる。そして不思議なことに気分も上昇していくのだ。
響歌はバカップルに学校から追い出された当初は帰るつもりだった。
だが、春色に染まった景色の中を歩いているうちに、このまま歩いて橋本の家に行くのもいいかも…といった気持ちに変わっていった。今日は午前中だけで学校が終わったというのもその気持ちを後押ししていた。
学校から出た1時間後、響歌は橋本の家の前まで来ていた。
ここまで来るには来たが、いざ家を前にすると躊躇してしまう。このまま背を向けて帰ってしまおうかという気にさえなる。
しかしせっかく1時間もかけてここまで来たのだ。ここで帰ってしまうとそれが無駄骨に終わってしまう。
それに久々に橋本と話が出来るチャンスがきているのだ。無駄にするわけにはいかない。帰ってしまったら後で後悔するに決まっている。
中葉の言葉を本当に信じたわけではないが、それでも橋本のことを中葉に言われたことは事実なのだ。響歌はその言葉通り橋本の家に来ただけだ。もし中葉の言葉が偽りだったとしても、自分は騙されただけなのでそれを言いわけにできる。
橋本と、話ができる。
響歌は橋本と話がしたかったのだ。
いや、話ができなくてもいい。顔を見るだけでもいい。一瞬でも構わない。
橋本に…会いたい。
その想いが響歌を後押しする。少し震えた手でインターホンを押した。
インターホンの音がやけに大きく響いて聞こえた。少しの間の後、家の中から物音が聞こえてくる。
そして響歌の目の前にあった家の扉が開いた。
「…あ」
響歌の動きが一瞬止まる。
目の前の人物も、信じられないといった感じで響歌を見つめた。
「お前、いきなりどうしたんだ?」
目の前に現れた人物は橋本本人だった。
「あ、中葉君に聞いて…」
そうとしか言えなかった。
久々に至近距離で見たからなのか、どうにも落ち着かない。
だが、橋本にはそんなことを悟られたくなかったので、できるだけ冷静に振る舞おうとする。
そんな響歌の心境をよそに、橋本が眉を潜めた。
「中葉って、あいつが何か言っていたのか?」
どうも勝手が違う。中葉君の名前を出せばわかるだろうと思っていたのに…って、まさか!
「あのね、さっき中葉君に『橋本が響ちゃんに用事があるから家に来て欲しいと言っていた』と聞いたから、来てみたんだけど…どうやら違っていたみたいだね」
響歌は橋本に説明しながら中葉に怒っていた。
やっぱり騙されたんだ!
響歌の説明を聞いていた橋本も、憮然な表情へと変わっていた。
「そんなこと、言った覚えは無い」
まぁ、そうだろうね。
「やっぱりね。私もそうだと思ったんだけど、念の為に来てみたんだ。中葉君に会ったらこらしめておかなくっちゃ。じゃあ、用事は無いみたいだし、私は帰るね!」
響歌は橋本に一気に言った。
中葉に騙されていたのは自分も同じなのに何故か焦ってしまう。
橋本に背を向けて帰ろうとすると、橋本が言った。
「せっかくここまで来たんだし、上がっていけよ。どうせ電車には乗らずにここまで歩いてきたんだろ。ちょっとくらい休憩していけ」
駅に向かおうとした響歌の足が止まる。
「いいの?」
顔だけ振り向き、橋本に確認する。
「あぁ、早く入れよ」
橋本はそう言うと家の中に入っていった。
響歌も戸惑いながらその後へと続いた。
響歌はバカップルに学校から追い出された当初は帰るつもりだった。
だが、春色に染まった景色の中を歩いているうちに、このまま歩いて橋本の家に行くのもいいかも…といった気持ちに変わっていった。今日は午前中だけで学校が終わったというのもその気持ちを後押ししていた。
学校から出た1時間後、響歌は橋本の家の前まで来ていた。
ここまで来るには来たが、いざ家を前にすると躊躇してしまう。このまま背を向けて帰ってしまおうかという気にさえなる。
しかしせっかく1時間もかけてここまで来たのだ。ここで帰ってしまうとそれが無駄骨に終わってしまう。
それに久々に橋本と話が出来るチャンスがきているのだ。無駄にするわけにはいかない。帰ってしまったら後で後悔するに決まっている。
中葉の言葉を本当に信じたわけではないが、それでも橋本のことを中葉に言われたことは事実なのだ。響歌はその言葉通り橋本の家に来ただけだ。もし中葉の言葉が偽りだったとしても、自分は騙されただけなのでそれを言いわけにできる。
橋本と、話ができる。
響歌は橋本と話がしたかったのだ。
いや、話ができなくてもいい。顔を見るだけでもいい。一瞬でも構わない。
橋本に…会いたい。
その想いが響歌を後押しする。少し震えた手でインターホンを押した。
インターホンの音がやけに大きく響いて聞こえた。少しの間の後、家の中から物音が聞こえてくる。
そして響歌の目の前にあった家の扉が開いた。
「…あ」
響歌の動きが一瞬止まる。
目の前の人物も、信じられないといった感じで響歌を見つめた。
「お前、いきなりどうしたんだ?」
目の前に現れた人物は橋本本人だった。
「あ、中葉君に聞いて…」
そうとしか言えなかった。
久々に至近距離で見たからなのか、どうにも落ち着かない。
だが、橋本にはそんなことを悟られたくなかったので、できるだけ冷静に振る舞おうとする。
そんな響歌の心境をよそに、橋本が眉を潜めた。
「中葉って、あいつが何か言っていたのか?」
どうも勝手が違う。中葉君の名前を出せばわかるだろうと思っていたのに…って、まさか!
「あのね、さっき中葉君に『橋本が響ちゃんに用事があるから家に来て欲しいと言っていた』と聞いたから、来てみたんだけど…どうやら違っていたみたいだね」
響歌は橋本に説明しながら中葉に怒っていた。
やっぱり騙されたんだ!
響歌の説明を聞いていた橋本も、憮然な表情へと変わっていた。
「そんなこと、言った覚えは無い」
まぁ、そうだろうね。
「やっぱりね。私もそうだと思ったんだけど、念の為に来てみたんだ。中葉君に会ったらこらしめておかなくっちゃ。じゃあ、用事は無いみたいだし、私は帰るね!」
響歌は橋本に一気に言った。
中葉に騙されていたのは自分も同じなのに何故か焦ってしまう。
橋本に背を向けて帰ろうとすると、橋本が言った。
「せっかくここまで来たんだし、上がっていけよ。どうせ電車には乗らずにここまで歩いてきたんだろ。ちょっとくらい休憩していけ」
駅に向かおうとした響歌の足が止まる。
「いいの?」
顔だけ振り向き、橋本に確認する。
「あぁ、早く入れよ」
橋本はそう言うと家の中に入っていった。
響歌も戸惑いながらその後へと続いた。