少女達の青春群像 ~舞、その愛~
響歌の告白
只今、2年生が始まって3回目の数学の授業中。比良木高校の経済科では、2年生からの数学と英語の授業は経済科の2クラスで3グループに別れて授業を受けるシステムになっている。
なんでわざわざそんなことをするんだろうね?
少しでも少人数で受ける方が授業に集中させ易いからなのだろうか。
ま、私の場合は生徒数が多くても少なくても勉強しないに決まっているけど!
しかもこの数学の授業では愛する中葉君と一緒になれたのよ。勉強に身が入るわけがないじゃない。
ついつい中葉君の方を見てしまうわ ?
舞は自分の右隣2列の最前列に座っている中葉の背中をうっとりと見つめた。
ちなみに舞の席はというと、中央の列の最後尾である。
中葉の背中を見つめていると、隣にいる響歌がシャープペンで肩を突いてきた。
もう、響ちゃん。人の恋路を邪魔しないでよ!
舞は響歌を睨んだが、響歌はものともせずに4つ折りのメモ用紙を舞に渡した。
はて、なんだろう?
いつも授業中にも関わらず話しかける響ちゃんが、無言で紙を渡すなんて。
舞は不思議に思いながらも、響歌から手渡されたメモ用紙を受け取り、中を開いた。そこには文字が1行だけ書いてあった。
舞の目が窓側に座っている橋本の方へと向く。橋本もこの授業を一緒に受けているのだ。
そうか、響ちゃんはとうとう…
自分のことではないのに顔が緩んでしまう。
メモ用紙に書いてあった内容は、響歌が橋本に手紙を渡したということだった。
これで後は橋本の返事待ちということになる。
ふふふ、橋本君ってば、凄く驚いたでしょうね。
だって一度は告白を受け入れられなかった相手からのラブレターだもの。一見、真面目そうに授業を受けているけど、絶対に授業の内容なんか耳に入っていないわよ。
ニヤニヤしながら橋本を眺めていると、またもや響歌からメモ用紙が渡される。
あら、また何かしらね?
舞はすぐそれに目を通した。
『今日は落ち着いて授業が受けられそうにないし、気分転換に五目並べをしようよ』
あら、懐かしい。
五目並べとは1年生の時によく舞が響歌と授業中にしていた遊びだ。白と黒のどちらかを選び、五目版の中で自分の選択した色が五つ並べば勝ちといった昔ながらのゲーム。それを2人は五目版の代わりにルーズリーフにマス目を書いてしていたのだ。オセロみたいにひっくり返す必要は無いので消しゴムもいらずにできる手軽な遊びだった。授業中の暇つぶしにはもってこいである。
しかも舞は1年の時に響歌に負けて終わったきり五目並べをしていなかった。
これは汚名挽回のチャンスだ。
『よし、響ちゃん。受けて立つ!』
舞と響歌の対戦の幕が、ここで切って落とされた。
『えぇー、なんでまた私が負けちゃうのー』
舞の書いた文字はわめいていた。
『フフッ、どう、私は強いでしょう?』
対する響歌の文字は勝ち誇っていた。
今は第6回目の対戦が終わったばかり。これまでの対戦成績は舞の1勝5敗。まだ1回しか響歌に勝っていない。
『悔しい~、響ちゃん、もう1回!』
そう書いて、響歌に五目並べの再戦を挑む舞。
今度こそ響ちゃんに勝ってやる!
舞が意気込んだ、その時だった。
「また君達は、何をしているんでしょうねぇ」
のほほんとしながらも、呆れたような声が頭上からした。
あっ、マズイ。
舞が恐る恐る顔を上げる。響歌も隣でヤバそうな顔をしていた。
先生は響歌の机にあった用紙を取り上げた。
「なになに『どう、私は強いでしょう?』う~む、確かに強いとは思いますけどねぇ」
とぼけた口調で取り上げた用紙に書いてあった文字を読み上げ、のんびり感想を述べる先生。
クラス中の視線が舞と響歌に集まった。
舞は穴があれば入りたい気分だった。
「それはともかく、そろそろ授業にも参加して下さいね」
響歌の机に紙を戻すと、先生は教卓に戻っていった。
ふうっ、助かった。先生がすぐに戻ってくれて良かったわよ。
これがクドだったら絶対にこれだけでは終わらないわ。絶対にネチネチクドクド攻撃してこの時間を終えてしまうんだから。
文章を読み上げられたことで少し目立ってしまったけど、今回は私だけじゃなくて響ちゃんも一緒だからまだ目立たなかった方だと思うしね。
さすがは生徒達の間で人気がある坂口(さかぐち)先生よ。
いいなぁ、3年2組の人達は。だってこの坂やんが担任なんだもの。
…自分のお気に入りの先生にもニックネームで呼ぶ舞だった。
舞は3年2組の人達を心底羨ましく思いながら授業に戻ったのだった。
なんでわざわざそんなことをするんだろうね?
少しでも少人数で受ける方が授業に集中させ易いからなのだろうか。
ま、私の場合は生徒数が多くても少なくても勉強しないに決まっているけど!
しかもこの数学の授業では愛する中葉君と一緒になれたのよ。勉強に身が入るわけがないじゃない。
ついつい中葉君の方を見てしまうわ ?
舞は自分の右隣2列の最前列に座っている中葉の背中をうっとりと見つめた。
ちなみに舞の席はというと、中央の列の最後尾である。
中葉の背中を見つめていると、隣にいる響歌がシャープペンで肩を突いてきた。
もう、響ちゃん。人の恋路を邪魔しないでよ!
舞は響歌を睨んだが、響歌はものともせずに4つ折りのメモ用紙を舞に渡した。
はて、なんだろう?
いつも授業中にも関わらず話しかける響ちゃんが、無言で紙を渡すなんて。
舞は不思議に思いながらも、響歌から手渡されたメモ用紙を受け取り、中を開いた。そこには文字が1行だけ書いてあった。
舞の目が窓側に座っている橋本の方へと向く。橋本もこの授業を一緒に受けているのだ。
そうか、響ちゃんはとうとう…
自分のことではないのに顔が緩んでしまう。
メモ用紙に書いてあった内容は、響歌が橋本に手紙を渡したということだった。
これで後は橋本の返事待ちということになる。
ふふふ、橋本君ってば、凄く驚いたでしょうね。
だって一度は告白を受け入れられなかった相手からのラブレターだもの。一見、真面目そうに授業を受けているけど、絶対に授業の内容なんか耳に入っていないわよ。
ニヤニヤしながら橋本を眺めていると、またもや響歌からメモ用紙が渡される。
あら、また何かしらね?
舞はすぐそれに目を通した。
『今日は落ち着いて授業が受けられそうにないし、気分転換に五目並べをしようよ』
あら、懐かしい。
五目並べとは1年生の時によく舞が響歌と授業中にしていた遊びだ。白と黒のどちらかを選び、五目版の中で自分の選択した色が五つ並べば勝ちといった昔ながらのゲーム。それを2人は五目版の代わりにルーズリーフにマス目を書いてしていたのだ。オセロみたいにひっくり返す必要は無いので消しゴムもいらずにできる手軽な遊びだった。授業中の暇つぶしにはもってこいである。
しかも舞は1年の時に響歌に負けて終わったきり五目並べをしていなかった。
これは汚名挽回のチャンスだ。
『よし、響ちゃん。受けて立つ!』
舞と響歌の対戦の幕が、ここで切って落とされた。
『えぇー、なんでまた私が負けちゃうのー』
舞の書いた文字はわめいていた。
『フフッ、どう、私は強いでしょう?』
対する響歌の文字は勝ち誇っていた。
今は第6回目の対戦が終わったばかり。これまでの対戦成績は舞の1勝5敗。まだ1回しか響歌に勝っていない。
『悔しい~、響ちゃん、もう1回!』
そう書いて、響歌に五目並べの再戦を挑む舞。
今度こそ響ちゃんに勝ってやる!
舞が意気込んだ、その時だった。
「また君達は、何をしているんでしょうねぇ」
のほほんとしながらも、呆れたような声が頭上からした。
あっ、マズイ。
舞が恐る恐る顔を上げる。響歌も隣でヤバそうな顔をしていた。
先生は響歌の机にあった用紙を取り上げた。
「なになに『どう、私は強いでしょう?』う~む、確かに強いとは思いますけどねぇ」
とぼけた口調で取り上げた用紙に書いてあった文字を読み上げ、のんびり感想を述べる先生。
クラス中の視線が舞と響歌に集まった。
舞は穴があれば入りたい気分だった。
「それはともかく、そろそろ授業にも参加して下さいね」
響歌の机に紙を戻すと、先生は教卓に戻っていった。
ふうっ、助かった。先生がすぐに戻ってくれて良かったわよ。
これがクドだったら絶対にこれだけでは終わらないわ。絶対にネチネチクドクド攻撃してこの時間を終えてしまうんだから。
文章を読み上げられたことで少し目立ってしまったけど、今回は私だけじゃなくて響ちゃんも一緒だからまだ目立たなかった方だと思うしね。
さすがは生徒達の間で人気がある坂口(さかぐち)先生よ。
いいなぁ、3年2組の人達は。だってこの坂やんが担任なんだもの。
…自分のお気に入りの先生にもニックネームで呼ぶ舞だった。
舞は3年2組の人達を心底羨ましく思いながら授業に戻ったのだった。