少女達の青春群像 ~舞、その愛~
バカップルとカップルもどき
今日も響歌は1人で生徒玄関から出た。
最近はいつも1人でそこを出ている。出て行く時間帯もだいたい同じ時間である4時だった。
響歌が校門へと向かっていく。校門付近に来た時、何かの気配を感じた。
振り向くと、そこには橋本の姿。
「よう」
「あっ、橋本君」
響歌は驚かずに声をかけた。それでも歩みは止めていない。橋本は自転車から降りると、自転車を引きながら響歌と歩きだした。
これも最近よく見られる光景だった。
響歌は校門のところで橋本と待ち合わせて、そこから一緒に下校するようになっていた。
そんな2人の姿を、3階の渡り廊下から眺める2人がいるのもいつものこと。
「また今日も一緒に帰るんだね、あの2人」
舞は嬉しそうに見ながら、隣にいる中葉に声をかける。
中葉も満足そうに窓の外にいる2人を見ていた。
「あぁ、そうみたいだ。カップルが増えるのはいいことだよな。しかもそれが自分達の友達なんだから、喜びも倍増だよ」
「でも、まだカップルにはなっていないんだけどね。見ていて本当にじれったい2人だよ。早く私と中葉君みたいにラブラブになって欲しいのに」
舞は嬉しそうにしながらも少し不満だった。
中葉が舞の頭を撫でた。
「焦っちゃダメだよ。ああやって一緒に帰るようになっただけでも大進歩なんだから。まだ口で約束して一緒に帰っているわけではないみたいだけど、お互い意識して帰る時間を合わせているっぽいしな。あの2人が結ばれるのにそう時間はかからないよ」
2人はさり気なく偶然会ったかのように振る舞っているが、周囲から見たら意識して合わせているのがバレバレだった。
6時間目が終わるのは午後3時半。宮内駅行の電車が比良木駅に来るのは4時半。お互いに合わせないと4時に正門で会うはずがない。それに響ちゃんが比良木駅じゃなくて仙田駅から乗っていることも、私は既に知っているのよ。
偶然を装い、遠まわりして一緒に下校する。
なんだか高校生が主人公の恋愛映画を見ているようじゃないの!
あの2人が初々し過ぎて、こっちはなんだか熟年カップルみたいな気さえしてきてしまうわ。
舞はうっとりして下校する2人を見ていたが、中葉の言葉で現実に戻される。
「ところで明日の遠足のことなんだけど…」
その瞬間、うっとりとしていた舞の顔が引きつった。
「あ、あぁ、それね。明日よね、明日…」
「舞はグループの人達に言っておいてくれた?」
「………」
中葉が訊ねたが、すぐに返答ができない。
…どうしよう。
中葉から視線を外して返す言葉を必死に探す。
そんな舞には、もう窓の外にいるカップルもどきの姿は目に入っていなかった。
最近はいつも1人でそこを出ている。出て行く時間帯もだいたい同じ時間である4時だった。
響歌が校門へと向かっていく。校門付近に来た時、何かの気配を感じた。
振り向くと、そこには橋本の姿。
「よう」
「あっ、橋本君」
響歌は驚かずに声をかけた。それでも歩みは止めていない。橋本は自転車から降りると、自転車を引きながら響歌と歩きだした。
これも最近よく見られる光景だった。
響歌は校門のところで橋本と待ち合わせて、そこから一緒に下校するようになっていた。
そんな2人の姿を、3階の渡り廊下から眺める2人がいるのもいつものこと。
「また今日も一緒に帰るんだね、あの2人」
舞は嬉しそうに見ながら、隣にいる中葉に声をかける。
中葉も満足そうに窓の外にいる2人を見ていた。
「あぁ、そうみたいだ。カップルが増えるのはいいことだよな。しかもそれが自分達の友達なんだから、喜びも倍増だよ」
「でも、まだカップルにはなっていないんだけどね。見ていて本当にじれったい2人だよ。早く私と中葉君みたいにラブラブになって欲しいのに」
舞は嬉しそうにしながらも少し不満だった。
中葉が舞の頭を撫でた。
「焦っちゃダメだよ。ああやって一緒に帰るようになっただけでも大進歩なんだから。まだ口で約束して一緒に帰っているわけではないみたいだけど、お互い意識して帰る時間を合わせているっぽいしな。あの2人が結ばれるのにそう時間はかからないよ」
2人はさり気なく偶然会ったかのように振る舞っているが、周囲から見たら意識して合わせているのがバレバレだった。
6時間目が終わるのは午後3時半。宮内駅行の電車が比良木駅に来るのは4時半。お互いに合わせないと4時に正門で会うはずがない。それに響ちゃんが比良木駅じゃなくて仙田駅から乗っていることも、私は既に知っているのよ。
偶然を装い、遠まわりして一緒に下校する。
なんだか高校生が主人公の恋愛映画を見ているようじゃないの!
あの2人が初々し過ぎて、こっちはなんだか熟年カップルみたいな気さえしてきてしまうわ。
舞はうっとりして下校する2人を見ていたが、中葉の言葉で現実に戻される。
「ところで明日の遠足のことなんだけど…」
その瞬間、うっとりとしていた舞の顔が引きつった。
「あ、あぁ、それね。明日よね、明日…」
「舞はグループの人達に言っておいてくれた?」
「………」
中葉が訊ねたが、すぐに返答ができない。
…どうしよう。
中葉から視線を外して返す言葉を必死に探す。
そんな舞には、もう窓の外にいるカップルもどきの姿は目に入っていなかった。