献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「……ねぇ、清澄。これなに? 誰の?」

「はっ?」

「ソファの下に落ちてるパンティよ! どういうこと!? 」

えっ。

「えー!? やだ清ちゃん! 本当に童貞卒業しちゃったの!?」

私は慌ててスカートを押さえると、スースーと風が通り抜けた。

しまった、私のだ。
焦って隠れたからすっかり忘れていたけれど、まだパンツを履いていなかった。
しかも今日は気合いを入れた一着で、ワインレッドでレースの面積が小さいもの。
お姉さんたちに見られるのは恥ずかしい。

「ち、違う、待」

「まだあったかい。清澄、なにか隠してない?」

「女はどこにいるの? 清ちゃん」

「帰したって! もういねぇよ! とりあえずそれ返せ!」

やばい!
とりあえず早くパンツを私に戻してもらって、履きたい。
これじゃあ大事な人質を取られているようなもので、お姉さんたちにパンツを返してもらわないと帰ることもできない。

ひとりきりのバスルームは寒かったはずが慌てすぎて暑くなり、水を浴びて頭を冷やしたいくらいだ。

そのとき、高い位置に掛けられたシャワーヘッドから水が一滴したたり落ち、私のつむじにピチャンと落ちる。

「ひゃっ」

思わず声が出て、私は凍り付いた。
つむじに落ちた水がまるで汗のようにこめかみに垂れてくる。

賑やかだったドアの外も、急に静かになった。

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