献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
足音が近づいてくる。
それは怒りが感じられ、どうにもできなくて冷たいバスルームの壁に背をつけて座り込み、顔を覆った。
洗面所の扉が開かれる音、そしてバスルームの押戸が乱暴に押される〝バリッ〟という音がすぐ近くで鳴った。
「……あーあ、やっぱりいた」
「えっろいパンツ落としてますよぉ、彼女さーん」
今まで扉を隔てていた彼女たちの声は間近で聞くと艶やかで、甘く、とても強く響いた。
私はなにも悪いことをしたつもりはないが、清澄くんのご家族と今ここで顔を合わせるにはあまりに恥ずかしい状況だった。
しかしずっと隠れているわけにもいかず、私はスカートを押さえながら立ち上がり、グシャグシャの顔で「すみません……」と頭を下げる。
顔を上げると、そこには直視するには眩しすぎる美女がふたり、厳しい表情で立っていた。