献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「だから愛莉は悪い子じゃないって。今日だって俺が誘ったんだよ。邪魔すんな」
「清ちゃんのバカ。童貞のくせにっ」
凜花さんが瞳をウルウルさせながらそうつぶやくと、清澄くんはもう反論せずにうつ向き、プルプルと震えている。
それ。
やっぱり本当なの?
……なんて言ったらいいのかわからないけど、意外すぎて未だに信じられない。
どう反応したらいいかわからず聞こえなかったフリを続けていると、お姉さんたちは大人っぽいブーツを履いて帰り支度を整える。
「じゃあ、清澄。私たち行くから。……あと、彼女。次はちゃんと挨拶してよね」
「は、はいっ」
「清ちゃんのこと傷つけたら許さないからね!」
「は、い」
「おい。いい加減にしろ。はやく帰れ」
清澄くんにシッシッと追い返すジェスチャーをされたお姉さんたちは、アッカンベーをしてドアの向こうへと去っていく。
私たちは閉まったドアを見つめてそれを見送り、彼女たちの足音が聞こえなくなってから顔を見合せた。
……清澄くん、気まずそうな顔だ。
私は少しの汗をかきながら笑顔を保とうとするが、嵐のように去っていったこの数分の出来事に驚きすぎて強張っていく。
「……いろいろごめん」
「う、ううん! 綺麗なお姉さんたちだったね」
清澄くんと三人で並ぶと美しすぎる三姉弟だった。
清澄くんの普段の女性は対する余裕は、なるほど、美人がそばにいすぎると慣れてしまうのだろうかとふと思った。
それが、童貞だという事実と辻褄が合わなくなって混乱するんだけど。