献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

ジグソーパズルもワイングラスも片付けられたなにもないソファテーブルに、私たちは再度並んで座り、話し始める。

「あの通り、うちの姉たちは昔から外面と中身にギャップがあるんだ。外では清純派を気取ってるが、家じゃ男の悪口ばっかり言ってる」

「……うん」

「こういうエッチは嫌だ、ああいうエッチは嫌だ、本当はひとつも気持ちよくないのに演技してやってるんだ、って。そういうのを昔から聞いてるうちに、するのが怖くなった」

「清澄くん……」

「俺もきっとそう思われるんだって」

清澄くんから怖いという言葉が出るとは思っていなかった。
お姉さんたちに聞かされ続けていた言葉が、彼のトラウマになっていたなんて。

「じゃあ、今までお付き合いした人は……?」

「もちろんいたよ。でも、期待されればされるほど気が進まなくなる。こっちが尽くせば喜んでくれるけど、その先の、自分が気持ちよくなる行為には踏み込めない。だんだん向こうも尽くされること慣れて一方的な関係になると、俺は虚しくなって冷めていく。相手のことが信じられなくなって、余計に怖くなって……」

「それで最後までしなかったんだ……」

「……全部俺が悪いんだ。付き合った女の子たちは悪くない。年齢を重ねるほど、取り返しがつかなくて恐怖が増していく。どうにかしなきゃって思うのに、いざそのときが来るとダメで……」

膝に置いている彼の手は震えていた。
背を丸めて切ない声でつぶやく清澄くんは、今まで見てきた彼とは全然違っている。

私とのことは、彼にとってもリハビリだったのかもしれない。

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