献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「もしかして、穂高さん彼女できたんですか?」
「えっ」
愛莉の姿を妄想しながらも頭の中にしっかりと経済動向を描いていた俺だが、それを若林の質問が一気にぶっ壊す。
「な、なんで?」
「だからご機嫌なのかなって。ほら、合コンの日野さんとも上手く行ってるのか気になりますし」
どうして普段天然なくせして、こういうときだけ察しがよくなるんだ。
「日野さんと付き合ってるんですか?」
「付き合ってない」
キッパリと吐き捨て、俺は外国為替を映したのPC画面を見つめながら、「付き合うわけないだろ」と言い直した。
黒背景の画面に、ぼんやりと若林が反射している。
奴は「そうですか」となぜかホッとした顔をしていた。
「そうですよね。穂高さん、もうすぐ異動しちゃうんですし。こんな時期に彼女作らないか……」
「そ。どうせもう会わないから」
俺は口の端で笑い、わざと意地の悪い顔を向けてやる。
朝のルーティンを終えると、引き継ぎ書の作成画面に切り替えた。
そうだ。
俺はもうすぐ異動する。
この関係は、それで終わりなんだ。