献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「日野さん、残念でしたね。穂高さんのこと」
ふっくらした唇を歪ませながら、西野さんが言った。
松島さんも隣でクスクスと笑う。
「……え?」
「だから穂高さん、いなくなっちゃうじゃないですか」
いなくなっちゃう?
「あれ? やだー! 知らないんですか? てっきり日野さん仲良しだから教えてもらってると思ったんですけど」
「穂高さん、異動するってさっきうちの社長に挨拶に来てたんですよ。お茶出した広報部の社員が聞いたらしくて」
「東京ABC銀行は全国にあるから、どこに行っちゃうんでしょうねぇ。大出世だって社長が言ってたみたいで、海外行くかもって噂ですよ」
……そんなの知らない。
清澄くん、なにも言ってなかった。
「ふふっ」
「やだぁ、日野さん」
ふいに、ふたりが目の前で口に手を当てて笑いだしたため、私は顔を上げた。
なんでそんなに笑ってるの……?
「なんですかその顔。日野さんショック受けすぎですって」
「アハハ、まさかやっぱり期待しちゃってたんですか? 自分だけが穂高さんに気にかけてもらえてたって」