献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「日野さんは誰も狙わないでくださいね。ただ座って、頷いていればいいんですから。わかってますよね?」
「……はい。わかりました」
すでに気が重く、背筋が丸くなった。
ビジネスカジュアルではあるけれど合コンには適さない服装の私は、すでにふたりとは少し見劣りしている。
初対面の人と会うのだから人並みに化粧を直したいと思ったが、それも言い出せない空気だった。
店内に一歩足を踏み入れると、ジャズ風味のインストゥルメンタルが流れていた。
「お待たせしました~!」
西野さんと松島さんが先に進み、男性陣の待つ個室を覗く。
「あ、待ってました! お疲れ様です。どうぞどうぞ」
お洒落テーブルに、ソファに近い座り心地のよさそうな椅子が並ぶ六人席。
手前にすでに男性ふたりが座っていた。
西野さんたちは「ふたりだけ?」と目配せをし、少し口をとんがらせたが、すぐに「お邪魔しまーす」と笑顔に戻って席に着く。