献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
午後、八時。
私と清澄くんはホテルにいた。
でもいつもの別ラブホテルではなく、今夜は高級なレストランでのディナー。
予約してくれていたらしく、私は知らなくててっきり居酒屋かラブホテルだと思っていた。
「す、すごく高級そうなところ……大丈夫かな……」
持ち合わせが多くないため不安を口にしたが、はなから私にお金を出させる気のなさそうな清澄くんは私のちっぽけな質問には答えなかった。
ここまで素敵な場所に連れてこられると、逆に心配になる。
まさかお別れのディナー?
店員に注がれたシャンパンで乾杯をすると、清澄くんはネクタイを整えて私に向き直った。
「まずは愛莉、今日はありがとう。……あとごめん」
「……え、あ。ううん」
「愛莉のおかげで本当に助かった。一応、ヨツバにもよつば商事にも改めて謝罪をすることになるけど、封が開けられなかったことで情報の流出は免れた。……で、安心してつい抱きしめちゃって」
体がふわっと温かくなる。
彼が赤くなったからか、シャンパンの酔いがもう回ったのか。
皆の前で抱きしめられたときの気持ちを思い出し、「うん」とうなずくだけで精一杯だった。