献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
野菜の鮮やかさが際立つバーニャカウダや、チーズをふんだんに使った小さなサイズのマルゲリータ、とびこの散りばめられたサーモンとタコのカルパッチョなど、女性向けの料理がずらりと並んだ。
お決まりの質問が飛び交うソファー席のテーブルで、笑顔を絶やさず、全員の気分を損ねず、ついでに間違ってロックオンをされてもならないというルールに従っている。
「東京ABC銀行にお勤めだなんて、みなさんエリートですよね。仕事できる人ってすごーい」
「大きなお金動かすんですもんね。ホントにすごーい」
ふたりは盛り上げ上手で、男性陣もうれしそうに笑っている。
眼鏡の男性は内藤(ないとう)さんという方で、二十四歳。
子犬のような男性は若林(わかばやしさん)、新入行員で二十二歳。
西野さんと松島さんはどちらも二十三歳。
二十七歳の私は年長者で、それだけでやや浮いていた。
すでに話題に入れず、内藤さんが無理に話題を振って私に喋らせてくれているような雰囲気になっており、心苦しくてたまらない。
どうかこのまま、時が過ぎ去ってほしい。
もう私はいないものとして扱っていいのに。
「俺たちまだ若手すぎてまともに仕事できてないし。褒めすぎ褒めすぎ」
内藤さんはそうは言いつつも、華やかな西野さんたちに褒められてまんざらでもなさそうに指で眼鏡を上げた。
「そうですよ。俺なんか全然で、エリートとかじゃないです」
若林さんも犬っぽく笑った。