献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

小さな言葉にモヤモヤが募りそうになるが、すぐにマイナスの気持ちを持ってはいけないと消し去る。
なにも考えてはダメだ。
落ち着いて、落ち着いて……。

「日野さんって、いくつでしたっけ?」

「……え」

そう質問をしてきたのは若林さんだった。
なんとなくわかっていたけど彼は天然で、キラキラした瞳で私に歳を聞く。
一度自己紹介しているんだけど、忘れてしまったらしい。

「二十七です」

苦笑いで答えると、内藤さんも「さっき聞いたろ」と若林さんを肘でつついた。

「ちょうどよかったです! 日野さんだけ話が合わないのは申し訳ないんで、俺の尊敬する先輩を呼びました! 先輩も二十七歳なんで話が合うと思いますよ」

私のためにそんなことしなくていいのに……と思ったが、対照的に西野さんと松島さんは目を輝かせている。
攻略対象がひとり増えるのがうれしいのだろう。

うれしそうな面々とは違い、内藤さんはなにかに気づいたように眉根を寄せ、若林さんを睨む。

「……おい、若林。まさかとは思うが、お前が呼んだのって……」

若林さんが悪気なく「それは──」と答える前に、この個室にその人はやって来た。

「悪い若林、遅くなった」

「穂高さん! お疲れさまです!」

彼が現れた途端、西野さんと松島さんは声にならない叫びを上げる。

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