献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

『ふうん。愛莉は泣いてるママをほうっておくパパが好きなんだね』

母にそう言われ、笑顔が凍りついた。
急いで『ちがうよ』と否定すると、今度は『じゃあパパが悪いのか?』と父がしかめ面をする。

『愛莉ちゃんは、おばあちゃんのことが一番好きでしょう?いつも一番楽しそうにお話してくれるもんね』

祖母が言った。それも違う。
本当は、祖母に出ていってほしい。
それで元の父と母に戻ってほしい。

でもそれを口にしたらどんなに祖母を傷つけるか、そしてその矛先はどこへ向くことになるのか、わかっていた。

だからなにも言えなかった。
ただ泣きそうになるのを笑顔でごまかして、『みんな好きだよ……』と言い続けた。

自分の本当の気持ちは隠しておかなきゃならない。
悪い気持ちを持っているなら、頭の中から消さなければいけない。
皆悪くない、こんなことを考えてしまう私が悪い。

中学二年生の頃、祖母が入院し息を引き取ったとき、ホッとした自分に絶望した。

これからは、心から人を思いやれる、いい人にならなきゃ……。


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