献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
内藤さんが「知り合いですか?」と尋ねると、穂高さんは「いつも書類受け取ってくれる事務員さん」と答える。
予想通り、西野さんたちが顔を見合せて私を睨んでいる。
数合わせで来た私が穂高さんと向かい合っている状況はふたりにとって不快なはずだ。
「へー、日野さんが穂高さんと顔見知りだなんて知りませんでした」
我慢できなかったのか西野さんが不満を露にしてそうつぶやき、ギクリとする。
受付には寄らずに総務部へ来るのだから私と顔見知りでもおかしくないけど、西野さんを差し置いて私が知られていたことがショックだったのかもしれない。
早く弁解しなくちゃ……。
私はすかさず「でもちゃんとお話しするの初めてですよね」と穂高さんに同意を求めた。
しかし気遣いができる彼は逆に「ですね。話してみたかったんでちょうどよかったですけど」と優しく返答してくれる。
若林さんが「ヒューヒュー!」と子どもっぽい歓声をあげ、「穂高さんと日野さん同い年みたいですし、ぜひ今日は親交を深めちゃってください!」とさらに盛り上げてしまう。