献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
〝ほかの子〟と言うとき穂高さんはひと目だけそちらへ目をやったが、すぐに私に戻す。
その瞳は自信に満ちていて、綺麗すぎて吸い込まれそうだった。
西野さんも松島さんも眉根を寄せて驚いた最初の表情のまま固まっており、なにも言葉が出てこない。
そのタイミングで彼は飄々(ひょうひょう)と立ち上がる。
「日野さん」
思わず触りたくなるような、男性らしくしなやかな手のひらが目の前に差し出された。
白いテーブルにライトが反射して、彼にスポットライトが当たっているように見える。
まぶしくて釘付けになり、動けない。
「俺と飲み直さない?」
これは私に向けられた言葉なのか、まだ信じられないまま、身体だけが熱くなっていく。
ここで頷いてしまったら、私と西野さんたちとの関係は最悪なものになるだろう。
きっと正解じゃない。
──でも。断れない。
絶対に間違っているのに、本能が、穂高さんを拒否できないと言っている。
「……うん」
小さく頷き、控えめに乗せた手をすぐに引かれ、個室の外、そして店の外へと連れられる。
残った皆がどんな顔をしているのか振り返ることもできないほど、穂高さんのうしろ姿から目が離せなかった。