献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「俺としてみる?」
私を連れて駅前通りを進む穂高さんのうしろを歩きながら、ぼんやりと考えていた。
勘違いしてはダメだ。
彼はたぶん、馴染めていなかった私に同情して、連れ出してくれたのだ。
彼に好みだと言ってもらえる部分が思い当たらないし、普段の彼は、あんなふうに『ほかの子はべつに興味ない』などと厳しい言葉を使ったりはしない。
誰にでも分け隔てなく優しい穂高さんだけど、今日はあの場での私が、あまりに惨めに感じたのかもしれない。
「とりあえず、堅苦しくないところに入ろうか」
「は、はいっ」
立ち止まった彼は、大衆居酒屋を親指でさしていた。
とても助かる。さっきのお店では所在がなくて縮こまっていたせいで、肩や背中が凝り固まってしまった。
中に入ると、のれんで仕切られた座布団に掘りごたつの半個室席が用意され、とてもリラックスできそうで安心した。