献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

TLコミックと言えば。
エッチシーンありの女性向けの作品のコミックを指したジャンルのことだ。
職場でたまに話題に上がっていることはあるけど、私はあまり読んだことはない。

「読んだことない」

というより、エッチシーンのあるものは読む気がなく、わざと避けていると言っていい。

だって、エッチには、いい思い出がなにもないのだ。
きっと私は向いていないのだと思う。
男性とああいうことをするのは、私にとって苦痛でしかない。

〝なんでも言うことを聞いてしまう〟という性格の私には、本当に、向いていなかった。

過去のことを思い出しただけで、今でも心と体が拒絶する。

「聞いてる? 日野さん」

「えっ……」

いけない、意識がどこかへいっていた。
ひとりで暗い気持ちになっていたが、穂高さんの声で現実に戻される。

彼の話はいつの間にか作品を見せてくれるという方向へ進んでいたようで、私の目の前には電子書籍アプリの漫画が表示されていた。

「ちゃんと見て。ただのエッチじゃない、これは純愛だ」

穂高さんは、たぶん酔っている。
予想外のことに焦って照れ隠しからお酒のペースを早めていたせいだ。
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