献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
そしてもうひとつ、来客対応も総務部の業務に入る。
大きな自動ドアのエントランスから入ってすぐには受付嬢が駐在するカウンターがあるが、そこパスして直接、すぐ隣の総務部のカウンターに来るお客様もいる。

郵便の配達員とか、グループ会社の社員、他社の営業、そして銀行の渉外担当などの、最初から総務部に用事がある人たちがそれだ。

「今日、少し忙しいですね」

私と同じ業務を受け持ってくれている後輩の里見(さとみ)さんが、合間に肩を回しながらつぶやいた。

「そうだね」

ショートカットでジャケットとパンツというモードな服装の彼女とは、とても仕事がしやすい。
裏表なく物事をはっきり言う人だから、本心を勘ぐって悩んでばかりの私には合っているのかもしれない。

「ていうか、また受付の西野さん、サボってません? やたらこっちに来るお客さん多いですよね」

「そ、そうかな?」

「『御用の方はあちらのカウンターへ』って立て札立てて、仕事放棄してるんですよ。日野さんがカウンターに出てきてくれるからって」

遠目で受付カウンターを見ると、たしかに受付嬢はおらず、こちらへ向いた大きい矢印がプリントされたプラスチックの札が立てられている。

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