献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
一瞬なにが起こったのかわからなかった。
声の後すぐに肩を引き寄せられ、気づけば私の体は穂高さんの腕の中にすっぽりと収まっていた。
視界は綺麗に整ったワイシャツの襟と、そこから覗く男らしい首筋や喉仏だけになる。
強引に引き寄せられたせいで彼にもたれかかる形で、脚も絡まる。
頭を抱き寄せられると、彼の上品な香りや息づかいを間近に感じた。
「下手くそは黙ってろよ」
彼は淳司に向かって、そう吐き捨てた。
穂高さんから発せられたとは思えないその言葉は、隙間なくくっついている私の体の芯まで響いてきた。
いきなり口調が変わった穂高さんに、淳司の表情からも笑みが消える。
「なんだと……?」
「俺は愛莉に痛くしたことなんてないし、泣かせたこともない」
肩に置かれていた穂高さんの手が、今度は私の頬を撫でる。