献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「どうしたんだろうね。具合悪くてお手洗いにいるのかな……?」
「日野さん、お人好しすぎます! あんなのサボりですよ、サボり。怒っていいんですよ!」
里見さんはヒートアップし、カウンターをパシンと叩いた。
音を出されるのはあまり得意ではない私はビクンと体が強張り、里見さんはすぐに「すみません」と手を引っ込める。
「でもムカつかないんですか? 日野さん優しいから、皆にいいようにされてると思います。ほら、広告宣伝部の松島さんも、いつも遅れた書類は日野さんにばかり出すし」
「うん……そうだよね」
里見さんの言う、受付の西野さんと広告宣伝部の松島さんは、たしかに私にいつも面倒事を頼むふたり組である。
私より四つ年下の二十三歳で、ふたりとも里見さんの同期にあたる。