献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
受付も広告宣伝部も、総務部との連携が必須で、なにか問題が起こって総務部の対応が必要になるときは、決まって私に「やっておいてくれますか」と言いにやってくる。
私は断ったことはない。
頼まれることは面倒でもがんばればなんとかできるレベルのものが多いし、年下でも社交的で周囲に好かれている彼女たちに目を付けられる方が大変なことになる。
それに、ふたりにもなにか理由があるのかもしれない。
表に出さないだけで本当は仕事がつらかったり、疲れてイライラしてしまうことがあるのかも。
だからこれは理不尽だな、と思っても、頼まれごとに慣れている私が引き受けてしまった方が問題がなくていい。
私はとくに、頼られることが嫌だとは思わない。
自分の中では折り合いがついているが、里見さんをどう納得させようか考えていたとき、私の立つ総務部のカウンターにお客様がやって来た。
「こんにちは、日野さん」
会釈され、彼の黒髪がさらりと揺れる。