献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
呆けながら書類を作成してると、カウンターに西野さんと松島さんが現れた。
広報部と受付は昼休みに入り、スマホを片手に社員専用のカフェへ向かう途中のようだ。
ふたりが揃うと、合コンでのひどい扱いが思い起こされる。
清澄くんとのことばかり考えて意識から抜けていたが、このふたりとはわだかまりを残したままだった。
「日野さんどうでした? あの後」
「突然あんなことになって、私たちすごくビックリしましたよ」
……あれ? 怒ってない。
ふたりはニコニコしながら、楽しそうにカウンターに寄りかかる。
「あ……ごめんなさい。急に抜けてしまって」
「本当ですよぉ。日野さんったらいつの間に穂高さんを口説いてたんですか? 職場は男引っ掻ける場所じゃないんですから、仕事に集中しなきゃ」
…やっぱり刺のある言い方をされている。
それに声も大きい。
「あはは、そんなんじゃないですよ……私が馴染めてなさそうだったから連れ出してくれただけで……」
「ただの飲み会なのに日野さんったら合コンみたいにはしゃいじゃって、いくらなんでも肉食すぎますよ~!」
周囲の総務部の同僚たちの視線が集まり始めた。
こんなに大きな声で話したら嫌でも聞こえてしまうだろう。
というか聞かせているのかもしれない。
ふたりともすごく怒ってるんだ。