献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「清澄くん、ここのお金──」
「いい」
清澄くんはいつもお会計まで済ませてくれてしまい、お金を受け取らない。
私よりずっと稼いでいるであろう人に無理強いするのも憚られ、どうすればいいかわからず困惑していた。
マッサージクリームももらってしまったし、うれしかったとはいえ真意がわからず不安になる。
まるでお金を払ってもらって体の関係を持っているような……。
いや、体の関係にも至ってないんだけど。
でも、佳恋と颯斗みたいにはなれていない。
そりゃ根底のお互いへの愛がないんだからしかたないけど、でも、私は……。
「愛莉。今度の休み、ふたりでどこか行こうか」
「……え」
「デート」
ワイシャツとスラックスに着替えていた清澄くんは、手首のカフスボタンを留めながら言う。
「ダメ?」
「い、行きたい!」
今ちょうど不安になっていたところに、まさかデートに誘ってもらえるなんて。
沈んだ気持ちが一瞬で飛んでいき、「どこ行こうか」と微笑む清澄くんに胸がジンと熱くなる。
〝デート〟しようなんてはっきりと言葉にされたのは初めてかもしれない。
この関係を、彼も少しずつ進めてくれようとしているの?
私も進めたい。
期待してもいいのかな……?