献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

彼のジェスチャーは私のうしろ髪を示しているのだとわかり、途端に顔が熱くなる。

「は、はい。少しだけ」

「やった、当たった。いい感じです。じゃあ、よろしくお願いします」

言うだけ言って、穂高さんは颯爽とカウンターから去っていく。

いい感じです、か……。

手は自然と、自分の毛先を触っていた。
たしかに髪を切ったけど、もともと長い髪を十センチほど切り揃えただけだ。
バレッタで留めてひとくくりにしていることもあれば、ハーフアップにしていることもあるのに。
気づくなんてすごいな……。

もし勘違いだったらどうしようとかは考えないのだろうか。
いや、勘違いでも彼に言われた方はきっと悪い気はしないけど。
それもわかっているから、言えるのだろうか。
思い付いたことをそのまま口にできるなんて、すごい。

ダメだ、顔の熱さが収まらない。
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