献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
待ち合わせ場所の定番であるお店のショーウィンドウ前に、三十分早く着いた。
清澄くんより早くここで待っていては気を遣わせてしまうため一度離れ、しかし来たらすぐに気づけるよう、向かいのカフェに入る。
「愛莉」
「えっ」
入り口すぐのひとりがけのソファ席に座っている彼は、蓋つきのプラカップに入ったコーヒー飲んでいた。
「清澄くん!」
彼はカップを持って立ち上がり、そのときとても自然に「かわいい」とつぶやかれ、耳もとに低く響いた。
恥ずかしくなったが、気合いを入れてお洒落をしてよかったと思う。
清澄くんの私服は白いインナーに黒いジャケットとパンツの、上品だが抜け感のあるコーディネート。
髪もいつものスーツのときとホテルで下ろしたときの中間のような、緩くセットされたスタイルだった。
派手ではないシンプルな服装なのに、モデルのような着こなしにカフェでは誰よりも目立っている。
彼と同じようなコーディネートをしたら、おそらく私は地味に仕上がっていただろう。
「飲む?」
「あ、ありがとう」
プラカップを向けられ、受け取ってストローに口をつけた。
コーヒーだと思ったら、カフェラテだった。
ほんのり甘くておいしい。
ていうか……すごく自然に間接キスをするんだな。