献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
遠慮してカップを返すと彼は残りを飲み干し、カフェの外にあるゴミ箱にそれを捨ててから、私と肩を並べて歩き出す。
「清澄くんすごく早く来たんだね。待たなかった?」
「全然待ってないよ。愛莉、今日は気を遣おうとしても無駄だよ? 俺が先回りするからね。負けないよ」
「……な、なにそれ。ふふふ」
冗談めいた意地悪な視線を向けられ、私は思わず笑みがこぼれた。
清澄くんっておもしろい。
言葉選びも上手で、絶妙に肩の荷が降りることを言ってくれる。
「今日、いろいろイベントやってる日みたいなんだ」
「えっ」
「国立タカラ美術館でモネ展やってるし、アクアナイト水族館ではクラゲのライトアップシアターをやってる。中央スタジアムでアジア雑貨のマーケットもやってるよ。どこか行ってみない?」
「えっ、えっ」
彼は人通りの多い駅の連絡通路で足を止め、壁際に寄ってスマホ画面をいじりだした。
私を隣に招き寄せ、そのイベントの紹介サイトを順番に見せる。
清澄くんとの距離が近くてドキドキするし、美術館に水族館、アジアンマーケットのサイトも色鮮やかでワクワクした。
「すごい……どれも楽しそう……」
「じゃあ全部行く?」
「えっ!」
私にはとても魅力的な場所ばかりだけど、清澄くんは退屈ではないだろうか。
気を遣われているのかな。
私もどこか、清澄くんが楽しめるところを提案しないと……。