献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

だって私はセフレのようなものだから、今日もそのつもりだと思うじゃない。
それ以外で私と会うメリットが清澄くんにあると思えないし。
デートのときはホテルに行ったり、私が家でおもてなしをして泊まってもらったり、そういう流ればかりだったから。

顔の熱さが冷めず、両手で頬を押さえた。
勘違いが気まずくて早く解散してしまいたいけど、清澄くんは壁際から動こうとしない。

カップルが通りすぎ、辺りは恋人たちの夜の時間。

「愛莉がいいなら、俺はもう少し一緒にいたい」

清澄くんのその言葉は、ホテルへ行くとか、私の家でエッチをするとか、そういうことは含まれていなくて、つまりどういうことはなにもわからない。

でも、彼のまっすぐな瞳に見つめられると、うなずくことしかできなかった。

彼は私に一歩近づき、右手を繋いだ。
ゆっくりと歩き出す。

「ワイン飲める?」

「え? う、うん」

「じゃあ、飲みながらジグソーパズルやろうか」

清澄くんはタクシーを停め、運転手に住所を告げた。
それは私の家でも、ホテル街でもない。
清澄くんのマンションだ。


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