献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~

きちんと会話ができていない。
私の質問に答えてくれないし、肝心なことをはぐらかされている気がする。

私じゃダメってこと?
それならここまでするのは何故?

清澄くんの気持ちが全然わからない。

「愛莉、ほら」

服を整えた彼は、下着を拾って私に手渡しながら顔を覗き込んだ。
受け取ってクシャリと握る。
恥ずかしい。
私はこんなにさらけ出してしまったのに、清澄くんは私になにも見せてはくれない。

過去の恋愛を思い出した。
欲求を発散させようとする相手に、私は決して自分の本音を言わなかった。
そんな恋人とは信頼関係もなければ、愛情もない。
それでもすべてを隠していても、無理して欲求に応えることはできたのだ。

清澄くんがしてくれることも、そうだったら?

「……愛莉?」

耐えきれずに瞳がじわりと潤みだす。
だってそうだったらすごく寂しい。

「えっ、泣いてるのか?」

「ご、ごめん……清澄くんの気持ちがわからなくて……私じゃダメなのかなって……」

「いやその、違う、俺は……」

面倒な女になりたくなくて涙を止めようとするのに、どんどん溢れてくる。

彼はもう一度膝をついてソファにいる私と向き合ったが、そのときちょうど、〝ピンポン〟というチャイムの音が鳴った。

清澄くんは「え」とつぶやき、すぐに立ち上がって玄関を振り返る。

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