献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
私は小さな声で彼に「お客さん?」と尋ねたが、返事をしない。
「ねぇ、清澄。いるんでしょ? 開けて」
「清ちゃーん。電気ついてるの見たんだからね。居留守使ってもダメだよぉ」
ドアの外からふたりの女性の声が聞こえてきた。
誰?
声を聞いて私へ目を戻した清澄くんは真っ青で、なぜか私まで不安になる。
「ヤバい」
彼は小声でつぶやいたため、私も同じく小声で「誰なの?」と聞き返した。
いつもの余裕のある清澄くんとは違って様子がおかしい。
「ごめん愛莉、ちょっと隠れてくれ」
「え?」
「追い払ってくるから。ここに入ってて」
両手をとって立たされ、手首を引っ張られたかと思うと、あれよあれよという間に洗面所の扉の中へと押し込まれた。
理解が追い付かない間に続いてソファに置いてきたハンドバッグと玄関で脱いだ靴を持たされ、私の形跡はすべてこの洗面所内に押しやられる。
「清澄くん……」
「マジですぐ開けるから、ちょっとだけここに隠れてて」
スライド式の扉を閉められ、洗面所内は暗くなった。