献身遊戯~エリートな彼とTLちっくな恋人ごっこ~
「今日は用事があるっつったろ! なんで来るんだ」

「いいじゃない、私たちここにいるから用事済ませてきてよ。お風呂入って待ってるから。あ、私のヘアマスクある? 」

「ねぇよ!」

「ふふふ、清ちゃんちにお泊まりするの久しぶりだぁ」

……え。これどんな会話なの?
あんまり女の子と連絡とらないって言ってたのに、彼女たちをいつも泊めているような口ぶりだ。

近づいて聞き耳を立てたいが、見つかってはならないという言い付けが脳裏をよぎり、私は洗面台の隅で小さくなった。

外から帰って手を洗おうとすればいずれここは見つかってしまう。
もっと奥に隠れた方がいいだろうか。

私は音を立てないように慎重に、繋がっているお風呂場への押戸を開いて中へ入った。

「……え」

賃貸にしては綺麗で広い洗い場と湯船、そしてシャワーが備え付けられており、ホテルのようなブラウンのバスタオルとフェイスタオルが天井近くの棚に準備されている。

その横には、女性用の人気のヘアマスクのボトルが寝かせて置かれていた。

間違いなく女性のために準備されたもので、ボトルのピンクみがかった中身はすでに少量使われた形跡がある。

「清ちゃん、今夜は三人で楽しもうね」

「清澄。寝かさないわよ」

じわじわと理解し、私は暗いバスルームの真ん中で、声がでないよう口を押さえた。

今夜は三人で。

──清澄くんって、そういう人なの?




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