ふれる、甘い、くちなおし。
「ぜんぶ、最後まで、見たよ。」
目線を天音くんの瞳から外す。
そして脳内に流れるあのキスシーン。
ただの仕事。
そう思えばそう思うほど、胸がギュッと締め付けられる気がした。
天音くん初めての恋愛ドラマ。
最初は、出るとしか聞かされてなかったから………まさか、主人公の相手役だったなんて。
「今日は………最終回の収録だったんだよね。
来週、楽しみに……してる、からっ。」
言葉の途中で涙が溢れた。
私じゃなくて、またあの女優さんとキスするんだ。
“私じゃなくて”
その言葉が重く、のしかかる。
天音くんはなんとも思ってないのかな。