大人の初恋
翌朝。

頭が痛い。
昨日どうやって帰ったか分からない。
高橋 渚達のテーブルに行き、間違えてテキーラを飲んだ後の記憶がない。
しかし家には帰れている。
しかも部屋着に着替えて、ベッドの上で寝ている。
記憶が無くなるなんて初めての事だった。
重い体を動かし台所に向かう。
どうにかしてこの最悪な二日酔いを治めようと歯磨きをしてみたり、コーヒーを飲んだりと色々試してみる。
そんな事をしながら美紅にLINEをしようとスマホを手に取る。
知らない番号から着信が2件。
誰かな?と思いながらも知らない番号だった為、折り返しの電話はしない。
LINEの画面を開き美紅に連絡を入れる。

【昨日私どうやって帰った?
色々と大丈夫だった?】

【覚えてないの?笑
渚さんに絡んでたよ。笑】

最悪だ。よりによって高橋 渚に。
どうしてあの時間違えてテキーラなど飲んでしまったんだろう。後悔しかない。

【どんな風に絡んでた?
月曜日、会社行けないよ。泣】

【大丈夫だよ。結奈は怒りながら絡んでたけど、渚さんは面倒見てくれてたよ。結奈を家まで連れていったのも渚さんだよ。月曜日お礼言いなよ!】
全然大丈夫ではない。よりによって、あの高橋 渚に送ってもらうなんて。月曜日からどんな顔して会社に行けばいいのだろうか。
美紅もどうして私を送り届けてくれなかったのだろうか。
何より一番は、高橋 渚に送ってもらった自分に腹が立った。


気分をあげる為に部屋の掃除をしようとした時だった。
知らない番号から着信がなった。さっきの番号と同じ番号だ。
恐る恐る電話に出る。
「もしもし?結奈?」
誰だろう。番号は登録されてないのに「結奈」と馴れ馴れしく呼び捨てにするような間柄の人なんて居ないんだけどな?
「すみません。どちら様でしょうか?」
とたずねる。
「昨日、結奈を介抱しながら送り届けた渚です」
嫌味たっぷりな答えが返ってきた。
物凄く気まずい。嫌味を言うためにわざわざ電話をかけてきたのだろうか。
そんなに嫌だったのなら送り届けなくて良かったのに。と思いながらも。
「すみませんでした。酔っぱらいの介抱なんて面倒事を押し付けてしまって。わざわざ家まで送ってくれなくても大丈夫だったのに。ありがとうございました」
こちらも嫌味まじりで返答する。
「どういたしまして。
運転代行で家に帰った時、結奈の車の鍵を持って帰ってしまったので、今から届けます」
わざわざ嫌味を言うために電話をしたわけではないようだ。
そんな事よりも、今から鍵を届に家に来る。
家の中まで来るのだろうか?
玄関先で鍵を受け取り、さようならで良いのだろうか?
お茶くらいだした方がいいのだろうか?
色んな事が頭によぎる。
「11時頃行きます」
「はい。よろしくお願いします」
電話が切れた。
時計を見る。今の時間は9時30分。後1時間30分しか時間はない。急いでシャワーを浴び服を着る。玄関に芳香スプレーをふり、掃除機をかける。食品が入ってる棚を開け、コーヒーや紅茶のストックが有るか確認をする。
10時55分。洗濯物が干している事に気がついた。急いで片付けようと洗濯物を手に取る。
「ピンポーン」
インターフォンが鳴る。
慌てて手に持っている洗濯物達をクローゼットに突っ込む。
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