ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
七生がいつの間にか動いていたらしい。そんなことをしていたとは知らなかった。

「じゃあ……な、何をしに……」

そんなこと簡単に信じられない。
強引で、危険な人だ。
いやらしい手の感触を思いだして、気持ちが悪くなった。

「あいつが居ないうちに旭川さんに渡したい資料があってさ。マンション前で待ってたら、今日は違う場所に向かっているって連絡入ったから」

七生が出張していることを知っているようだ。
結局、待ち伏せをしているではないか。
接近禁止命令とは、家や職場に来ては駄目なはずではないのか。

「連絡って、誰からですか?」

「興信所」

「ーーーーはい?」

(興信所って、身元調査だよね……?)
(つけられていたってこと?)

ゾクッとして、周囲を見回したが、とくにそれらしい人はいなかった。

「どういうことですか? 」

「間宮さんだよ。いつもいつも人を見下した目を向けてきて。まったく、本当にいけ好かない。ムカつくから、弱みでも握ってやりたくてね。

君もさ、いつまでも恋人ごっこなんかしてないで、目を覚ましたほうがいいよ。許嫁がいるくせに、遊んでいるのは一緒じゃないか。馬鹿にしやがって」

賢は封筒を投げてきた。
滑りながら足元に来て、クリップで留められた書類が少し出る。

「婚約者とか、それ本当? パーティーより前に、ふたりが付き合ってた形跡なんてひとつも無かったけど」

賢は文を嘲ると、すぐに背を向けた。
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