ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
『この間電話くれたときは、男なんて興味ないって言ってたから心配してたのよ』

「……それって、いつだっけ?」

『なんかのパーティーの前日じゃなかった? わたしが婚活パーティーと間違えた話。仕事ばっかりじゃなくて、彼氏でも作りなさいよって言ったら、仕事のプレッシャーでそれどころじゃないって言ってたじゃない』

(創立記念パーティーの前日に、付き合っている人はいなかった……?)

『男の人より研究の方が楽しいって言ってたのに、やっぱり恋すると変わるものね! いつから付き合っているの? パーティーで出会いがあったとか?』

嬉しそうな母親の声が、どこか遠くで響いているようだった。

頭がガンガンとして、よく聞こえない。
文は呆然と座り込む。
何が正しい情報なのだろう。

騙されていた?
恋人ではなかった?

七生より、賢の話を信じるなんてあり得ない。
でも、不安で仕方なかった。

興奮する母親の質問攻めに生返事をし、またかけると言って通話を終わらせた。
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