ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~

虚偽の証言は犯罪です。

思ったより交渉が難航し、七生が日本へと戻ったのは出国から八日が過ぎていた。
一週間以内で戻りたいと思っていたのに、見積もった予定より遅くなった。

アメリカ企業は国内の企業より主張が大きい。
遠慮など馬鹿らしいとでも言うように、ここぞとばかりに利益を得ようとする。

損害を最小限に抑えるには、裁判にさせないことだ。
目標通り、裁判になる手前で示談とさせたものの、どう頑張っても元の契約通りには履行できない。
期日までに補填できない材料があり、生産に影響がでた。FUYOUは大損害だ。

大山商事にも、もちろんダメージはある。

(まったく、自社に損益を出してまで俺に嫌がらせをするかね)

賢の仕返しにはあいた口が塞がらない。
感情だけで動く、子供のような嫌がらせであった。

完全な逆恨みではあるが、自分のせいでFUYOUを巻き込んでしまった責任もなくはない。
顧問弁護士としての役割を果たすべく、事態の収拾に奔走した。

目標日数を超えたものの、我ながら一週間で相手企業を黙らせたのはよくやったと思う。

しかしほっとしたのも束の間、七生には気になる事があった。
文のことだ。
帰国してからどうも余所余所しい。
笑ってはいるが、どことなく不安げに見える。

「旭川の態度がおかしいって? そりゃあ、初めての経験だったっていうのに、事後にそのまま放置したからじゃない?」

終業間近の執務室。
吾妻は、山のような稟議書に目を通しながら言った。
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