ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
文は、先輩の三宅に仕事を教わっていて、一時間ほど前から留守だ。

居ないすきに、ちょっと探りをいれたわけだが、文ついてなにか知らないかと聞いた答えがこれである。
吾妻は七生より数日早く帰国しているため、情報がないかと思ってのことだ。
しかし、どうやら吾妻にも分からないらしい。

今朝もキスは拒まなかったし、お土産のバッグも喜んで使ってくれている。
気落ちするような仕事の失敗も見当たらないし、特にトラブルも聞いていない。
彼女の変化は、まったく不可解であった。

「人聞きの悪い。俺はフォローは怠らないし、そもそも大事な時期に呼び出したのは至じゃないか」

「火急に動かなくてはならないような怨恨を作ったのは、どこの誰だろうね?」

すぐに言い返されて、七生はひくりと鼻を動かす。

「完全なる逆恨みだろ。文が襲われた現場にいたのだから、対応を間違えた点ではお前も同罪だ」

吾妻は見ていた書類に判を押すと、はらりとデスクの脇にそれを追いやった。

「まあねえ……ちょっと大山商事に対する対応が軽すぎたかな。
あそこ、やり手なのはいいけど、専務一強で後継者も育てられないんじゃあね。来期からの仕入れ先を考えなくちゃだな。
あーあ、専務は熱い人だから交渉上手いし、物も良くてよかったんだけどな」

軽く言っているが、要するに契約の打ちきりだ。
< 109 / 132 >

この作品をシェア

pagetop