ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~


七生が帰国して、初めての週末を迎えた。

疲れたなどと適当に誤魔化して、一緒の時間を過ごす事を避けていたが、土日となるとそうもいかない。

あからさまに避けているのはバレているだろう。
でも、どういう顔をしていいのか分からない。

七生には、十歳年下の許嫁がいる。
彼女とは幼馴染みで、両親共に公認の仲だ。
ふたりで映った写真も入っていた。

七生の出張中、大山商事との件で契約トラブルがあったと他の秘書から話を聞くことが出来た。
それは賢が仕組んだ事で、その解決の為に吾妻と七生が急遽アメリカに飛んだ理由も分かった。

その話を知ったとき、興信所の話も嘘ではないかと考えるようになった。
嫌がらせかもしれない。
資料などいくらでも偽造できる。

七生の気持が、ただの火遊びだとは思いたくない。

そう言い聞かせて、なんとか心を保っていたときに聞いてしまったのが、吾妻と七生の会話であった。

三宅からの業務研修を終え、ちょうど終業時刻迎えた時。
吾妻に退勤前に挨拶をすべくと、ドアをノックしようとしたときだった。

副社長の執務室では、七生と吾妻が何かを話していた。
はっきりと聞こえたわけではない。

しかし、『コトネ』『許嫁』とワードだけはしっかりと拾えた。
岩瀬琴音(いわせことね)……書類にあった名前。七生の許嫁の名前であった。

その時の落胆は、言葉では言いあらわせられない。
とっさに何を聞いてしまったのか理解出来なくて、その場に立ち尽くして居た。

見せられた資料が、本物だったと証明された瞬間だった。
< 111 / 132 >

この作品をシェア

pagetop