ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「料金を支払って賃借契約をしている。俺は部屋を自由に使用する権利がある」
七生は頭を摩りながら反論した。
「アパートじゃあるまいし、ただの我儘なのにそれっぽく語るな! 医者には必要に応じて患者に部屋の移動などの要請をすることができる! 病院内では俺の指示に従ってもらいたいね」
「病状以外に関しては、患者のプライバシーに配慮しなくてはならないのでは? 部屋で自由に過ごすのは当然のことだ。まったく気を使えない医者だな」
「自由を履き違えているよね」
ふたりは言い合いを続ける。
(キス……え? なんで間宮さんとキス?)
文はその間も混乱したままだった。
バクバクとした心臓はいつまで経っても落ち着かない。
自分の名前を呼ぶ声に全身がゾクゾクとしたし、伏せたまつ毛がなんとも色っぽかった。
意外にも唇が柔らかかったなどと思ってしまった自分が、痴女のようで悶絶する。
「はぁ、それにしても計画が壮大すぎじゃない? 巻き込まないで欲しいんだよな……」
考えに没頭して、宝城が七生に向けて放った呆れた声は聞こえていなかった。