ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~

副社長が何度も口説いたと言うだけ合って、期待通りその手腕は見事なものである。
化粧品パッケージの文言から末端のお客様相談窓口のマニュアルまで作成し、ひとつひとつの事案を最小限の炎上で抑えている。

天才気質で頭の回転も速く、文とは喋るスピードからして違った。
冷たい風貌が苦手でなるべく関わりたくないのに、いつも吾妻と一緒だから、必然的に顔を合わせることが多くなってしまう。

電話対応やスケジューリング程度で慌てふためいている姿は、さぞかし滑稽なのだろう。
常に刺さるような視線を向けられて、会う度に苦手意識を感じていた。
格好いいのは確かだ。尊敬もある。
しかし、スズメが鳳凰に出会ってしまったような畏怖を感じるのだ。

文の認識は、そんなだった。
それなのに、いつ付き合ったというのか。

退院した文は、わけがわからないまま一緒に暮らすことになった。


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