ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~

互いの認識に相違がありますね。


ピッピッという規則的な電子音で目が覚めた。
いつもの目覚ましではない。

じわりと意識が覚醒すると、ひどく体が重く感じた。重息苦しい。
鉛のような体に力を籠めると、そこら中がずきりと痛む。

「う……」

呻いた声はがさがさだった。水が飲みたい。
ゆっくりと思考を巡らせ、社長に無理やり参加させられたパーティーで、階段から落ちたことを思い出す。
そっと瞼をひらき、周囲に視線を巡らす。

ぼやけていた視界がハッキリしてくると、文が居るのは知らない部屋だった。
濃紺の壁紙と木目の建具で統一され、落ち着いた風合いだ。
折り下げ天井からのやわらかい間接照明が、部屋を暖色に照らす。

(どこ……?)

てっきり白壁に蛍光灯の病院かと思ったが、まだ会場となったホテルの部屋なのか。
しかし、ベッド脇には点滴と心電モニターがあった。
そこから伸びる線は自分の体に繋がっている。音はモニターから出ていた。

ベッドは良く見知ったシルバーのパイプベッドではなく、木目調でおしゃれだ。
しかし転落防止のパイプが備え付けられ、シングルサイズなことに首をかしげる。

ホテルのベッド? ……にしては実用的な気がする。
部屋を見回す。広くおしゃれな造りではあるが、ホテルの一室というには違和感があった。
そこでやはり病院なのかと思い直す。
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