ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~
「いえ、ひとりで大丈夫ですので」

「七生の顧客にブランド会社がいるんだよ。いろいろ融通きくし、七生はセンスいいから勉強兼ねて行ってきて。旭川ひとりに任せておくとちょっと心配だしね……」

苦笑されて言葉を詰まらせる。
たしかに七生はタイピンやカフスの小物までセンスがいい。

「わたしでは不満ですか」

黙って聞いていた七生が口を開いた。眼鏡が光る。

「そういうわけでは……」

七生のセンスに不満はない。
女子社員たちがおしゃれだと、褒めているのを聞いたこともある。

「ではすぐに出かけましょう。時間がない」

文は目を泳がせた。もう七生が秘書になったほうが良いのでは。

「いってらっしゃい。俺の為だと思ってよろしく。明日までの変身楽しみにしてるよ」

吾妻は笑顔で手を振る。
そりゃあ、メンツをつぶさないようにしなくてはと思うが……。

(なんで間宮さん?!)

やっぱりよくわからなくて、文は七生に引きずられるようにその場を後にした。
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